晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「英語バカのすすめ」

 横山雅彦さんという存在は知らなかった。現在は、関西国際大学の准教授だが、予備校や英会話学校で教えてきた人だ。横山さんがどのように英語と出会い、学んでいったのか。副題に「私はこうして英語を学んだ」とあるが、近年やたらと唱えられている英語4技能に当てはめれば、この人は「聞く」「話す」をメインにして、英語を身に着けた人のようである。読んでみると、言葉は悪いが、確かに「バカ」である。畏敬の念を抱くほどに。

 いまでこそ英語教育の世界を俯瞰できるようだが、英語に出会った当時(中学生あたり)は音声を入口に出会ったようだ。耳がいい人なのだろう。そして、その再現能力も高いのだと思う。文法などはそっちのけで、英語を読んで、英語で発話(結果的に暗唱できるほどに)を繰り返したそうだ。スコットランドの人に習えば(もしくは手本にすれば)、スコットランド訛りに、米国人なら米国風になったようである。たぶん、こういう人は「ものまね」が上手だと思う。そっちの道に進んでも面白かったのでは(どういうキャラかわからないけど)。それと空手の有段者と思われる。身体能力も優れているのだろう。

 ここまで文法を意識しないで英語ができるものなのかと感心してしまう。覚えこむほど読むことによって、英語のプラットフォームが頭の中にできてしまったのだろう。英語の弁論大会で活躍して、推薦で京都外大に入ってしまう。いわゆる受験的な英語は勉強しなかったらしいので、普通に受けたら大学に進めなかったかもしれない。

 横山さんはその後、東京外大の大学院に進み、予備校講師になる。ここらで文法の大事さに触れたようだ。そうじゃなきゃ、大学を目指す生徒を教えられないはず。これを書くために横山さんのツイッターをのぞいてみたが、「英文法」「英会話」を両立させる、というか別物として扱わないというのが信条のようだ。確かに日本語だって、分けて考えている人はいないだろう。

 とはいえ、英語は外国語である。文法的にも問題のない英語を話すとなると、相当の努力を要することになる。横山さんは、しっかりした英語を使いたかったら、やることはやりましょうという考えだ。これはごもっとも。

 文科省は4技能として、どこかバランスよく「読む」「聞く」「書く」「話す」を育てようとしているように見えるが、横山さんのように得意の「一芸」が他の能力を引っ張るということもありえる。別に大学受験時に4技能がバランスよくできなくたっていいような気がした。もう一点、この本から感じられるのは、著者の地元愛。兵庫県三木市出身。酒米山田錦の日本一の産地だそうだ。ここの酒もうまいのだろうか。今度、試してみよう。