晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「英語で読み解く賢治の世界」

 古本屋で本を二冊買った。家から一番近い書店が古書店になってしまってからしばらく経つ。意外と入れ替わりがあって、つい足を止めてしまうことがある。特に新書は数十冊単位で入るようだ。で、買ったのが、ロジャー・パルバース「英語で読み解く賢治の世界」。岩波ジュニア新書なのでやさしく書いてあるが、でてくる英単語は決して簡単じゃない。英語の学習の比重よりは、宮沢賢治の世界が大きい気がする。

 ロジャー・パルバースさんって、日本に来た英語圏の人でやたらと学習系の本を書いている人と最初の方は思っていたのだが、「戦場のメリークリスマス」の助監督を務めるなどと、映画製作の世界でも活躍していたらしい。米国出身だが、オーストラリアの国籍を取得。ロシア語やポーランド語もできる。宮沢賢治井上ひさし作品の翻訳家としても知られる。パルバースさんが書く本は、かなりの割合で上杉隼人さんが訳している。

 賢治の作品を取り上げて、英訳。そして賢治の世界を掘り下げながら、なぜこのような英単語の選択をしたのか解説している。似たような意味を持つ言葉があるのは日本語でも一緒だが、賢治はこういうことを言っているのだと、その単語を選択した理由が書かれたりする。

 冒頭に書かれている部分だが、誰でも知っていると思われる「雨ニモマケズ」。パルバースさんは、Strong in the rain と訳している。中学英語レベルで逆に訳せば、「雨中でも強く」と言ったところか。筆者は「マケズ」にとらわれて、unyielding(屈しない)や not giving in(負けない)とはせずに、詩の冒頭をかざるという意味では、もっと印象の強い言葉として、strong を選んだとしている。

 このような調子で、「春と修羅」などを紹介するのだが、頭に残るのは英語ではなく、賢治のことばかり。英語が上手にならない理由が、我ながらよくわかった気がしている。直球の英語学習よりは、どうやらその言葉の周辺の話が好きなのだ。これはもう治らないなあ。