晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「新聞記者、本屋になる」

 毎日新聞論説委員まで務めていた人が書店を開業していたそうだ。新聞記者はつぶしの効かない職業とは聞くが、海外特派員とか話題の本の著者など多少箔がある人は大学に呼ばれて、その専門分野やジャーナリズム論などを教える立場になることが多い。現役時代から、非常勤で大学と関係を作っている記者もいる。退職した記者が経験を生かして、逆の立場ともいえる企業や団体の広報担当になるなんてパターンもある。

 この本の著者の落合博さんの記事も何度か読んだことがあるはず。定年前に辞めて書店を立ち上げ、来年のサン・ジョルディの日には5周年を迎えるとのこと。なかなか健闘していると言えると思う。そうじゃなきゃ、本にならないだろう。こちらも先行きを考えている身。参考にさせてもらうつもりで読んだ。

 落合さんはそもそも「書店開業が夢」などという書店愛がある人じゃなかったそうだ。サン・ジョルディの日の存在も知らなかった。でも取材がらみの本などは相当読んでいたはずだ(仕事がらみの読書は「調べもの」で、趣味の読書と区別する人はいるだろうが)。新聞社を辞めたのは58歳で、当時子どもは3歳(今は7歳)。離婚率が高い職業とはいえ、初婚なのか再婚なのかはわからない。しかし子どもの年齢を考えると、腹をくくって「攻める」ほかなさそうである。妻が17歳年下で、看護師というのは少し心強いだろうけど。

 きっかけはどうあれ、開業に向けての準備はしっかりしていたように見える。妻と子どもに対する責任とも言えるだろうが。仕事柄、人とつながりを作れる立場も幸いしたのだろう。成功したと語るのは早計だと思うが、比較的上手くいっているように見えるのは、店を空間を生かせる造りにしたことと思われる。別な物件を探しているときに倉庫だったところを紹介されたらしい。もともと書店一本に頼るのは不安で、カフェ併設は考えていたらしいが、写真を見る限り、なかなかかっこいい書店で、イベントも開催しているとのこと(コロナの状況による)。一度行ってみたいと思っている。

 書店愛よりも、方法論としての書店経営をつづった本。書店を始めるにあたって読んだ本や雑誌、開業の経過などが巻末についており、参考になった。せめてお子さんが成人するまで、頑張ってほしい。