晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「物語を忘れた外国語」

 黒田龍之介さんの本を読んだ。この人のいいところは、外国語を学ぶって単純に楽しいと思わせるところだ。きっちり学ぶとなると、しっかりした勉強が必要だろうと思うのだけど、つまみ食い程度の楽しさもあることを教えてくれる気がする。でも、この人はロシア語やスラブ語系は相当できるのだろうなと思いつつ。この人の外国語に関するエッセイには、肩の力を抜いて、面白いところだけ面白がればというメッセージを感じる。でも、(たぶん)やることはやっているのである。本人は楽しんでいるから苦にならないのだろうけど。

 日本の小説をいろいろな外国語で読む。これが英語の学習本だと、文法的なことを持ち出して、著者の意図したところがどうのこうのと探ったりするのだが、黒田さんは「ちょっとした外国語の世界」が好きだそうだ。英語やフランス語はもちろん、ウクライナ語、チェコ語、トンガ語、スウェーデン語とか、いろいろな言語にちょいと触れて、次に行くって感じ。主にヨーロッパやスラブ語圏が多いような気がする(詳しくはわからない)ので、ちょっとした本で楽しむ欧州横断旅行というところか。あまり深く入り込まず、停車したところを楽しむ。

 外国語に触れたくなった時には、本を読むか、映画を見るそうだ。とくに映画。黒田さんにとって知らない言語であるアラビア語だって、見続けているとストーリーがつかめてくるそうである。音を楽しむとか。米原万里さんは本を読めるのを言語をマスターした基準にあげていた。黒田さんは読める言語は限られているというので、その意味では数カ国語はできるようだが、学校や大学で学んだものは、映画を見て掘り下げるような感覚で身に着けていったのかもしれない。

 旅行会話なら、いくつかの国に関しては「根拠のない自信」を持っているが難しいことはわからないと書いてある。それでいいじゃん、それで十分だよ。彼の本を読んでいると、英語で汲々としているのが、何か馬鹿らしくなる。