晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「韓国エンタメはなぜ世界で成功したのか」

 韓国出張経験が割とあり言葉が多少使えるので、15年くらいまで周囲には「韓国通」だと思われていたようだが、今や随分と縁遠くなってしまった。韓国映画は好きなのだが、ドラマはまるでみていない。日本のドラマも含め、そもそも連続物を見る習慣がない。そして音楽となると、まるで時間が止まったようである。さすがにチョー・ヨンピルとは言わないが、今世紀に入ったあたり以降、アップデートされていない状態だ。

 著者は韓国在住のライター、菅野朋子さん。昔は文春のライターだった。韓国モノの本を何冊か出している。韓国エンタメ成功への軌跡ともに、自殺が相次ぐ韓国エンタメの問題点などにも触れている。雑誌の長めの記事を読むような感じで、スーッと読めた。

 そもそも軍事政権時代は、歌詞やドラマの内容の検閲があったそうだ。それがほぼソウル五輪のあたりまで。いまでは政権批判にとれるような作品も作れるが、それでも最近まで政府のブラックリストに載っていた監督や俳優は多い。それも結構有名どころが。

 大きなきっかけは、90年代後半の金融危機となるのだろうか。ここらあたりから、韓国はインターネット化が進み、エンタメの振興に力が入る。「文化」を売り物にしていこうと覚悟を決めたようである。しかし個人的には、出張時にあまり見る気が起きなかったのを覚えている。先見の明がなかったのだろう。でも歌に関しては、気に入ったアーティストはできた。今となっては少し恥ずかしいチョイスだが。

 「韓流」という言葉自体は中国発。91年製作の「愛が何だって」が97年に中国でヒットしたらしい。その後、「冬ソナ」の登場で日本でも火がつくことになる。自分にとってはまだバタ臭いドラマだったので、結構とまどったし、ペ・ヨンジュンの人気が理解できなかった。

 韓国エンタメの成功を簡単にまとめてしまうと、「国策」としての政府のバックアップと、芸能事務所がSNSや動画サイトなど、戦略的に先手を打ってきたという事だろう。具体例はそれこそ本を読んでほしいが、突き進む一方で、韓国が抱えている歪みも当然ある。

 日本にはまだ強い市場がある。日本の芸能事務所はますは足場を固めるのを優先しているように見える。市場の小さい韓国は、日本を含めた世界に打って出るしかない。現在は全般的にうまく行っているようだが、これから先はどうなるか。