年の初めの「月刊みすず」は恒例の「読書アンケート」。1・2月合併号として、2月上旬くらいに、いわゆる有識者たちが2021年に読んで印象に残った5冊(以内)が載ったのが発売される。2021年に「刊行された」本ではなく、「読んだ」本なので、古い本でもOKである。
毎年、出版傾向や興味範囲外ながらも話題の本なんかを目配せするのに使わせてもらっている。定価300円(税込み330円)を考えると相当お得で、読みごたえがある。通常号は連載が5本くらいか。まとまってみすず書房から刊行される本もあるので、すべてがわかるわけではないが、目を通している。こちらの知識不足が理由で眠くなる文章もある。
今回はいつもよりはバラけている印象だが、松本俊彦「誰がために医師がいる」をあげている人が複数いた。みすず書房から出た本を「忖度」して選んでいる人もいるかもしれないが、気になる本だ。依存症の正しい知識を発信する医師のエッセイ。これはブックオフに注文した。だって、みすず書房の本は高いんだもん。現在、アマゾンでも昨年刊行の本なのに売り切れている。アマゾンの中古本がブックオフより安いので失敗したと思っている。
同じく、佐久間文子「ツボちゃんの話 夫・坪内祐三」をあげた人も数人いた。買うか買うまいか迷っていた本だ。実は、坪内祐三さんを見たことがあるが、同じ屋根の下にいただけである。酒席だったが、どんなことを話す人なんだろうと、耳を大きくして盃を傾けた記憶がある。彼の本をよく読んでいたし、訃報があまりに残念で、つらくなりそうで買いそびれていた。個人としての坪内さんは当然知らないので、それを覗くべきか否かを迷っているところである。人が紹介しているとつい読みたくなってしまうのだが。
外岡秀俊さんは昨年末に亡くなった、元朝日新聞記者。亡くなる前にアンケートを提出したのだろう。これも遺稿と言うのだろうか。外岡さんが選んだのは、ジャック・アタリ「メディアの未来」、春名幹男「ロッキード疑獄」、宮本太郎「貧困・介護・育児の政治」、澤田展人「人生の成就」の4点。メディア関係と政治、出身地の北海道新聞文学賞あたりから選んでいるとは、目配せが効いている。外岡さんとも当然話したことはないが、カルチャーセンターでお話は聞いたことがある。「地震と社会」「3・11 複合被災」などの著書があるだけあって(「中原清一郎」名義で小説もある)、「災害は常に予測を超えるもの」という話をしていた。予測を超えるからこそ大災害になるとも言えるが、当時、肝に銘じたいと思った記憶がある。