晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「砂糖の世界史」

 砂糖と牛乳をかけたイチゴにありつけると、なんかゴージャスな気持ちになったものだ。いまや砂糖は高カロリーで何かと目の敵にされて代替品の甘味料がCMで放映されているが、子どもの時はなんかリッチな気持ちにさせてくれる存在だった。半世紀くらい前の話になるが。

 川北稔「砂糖の世界史」を読んだ。イスラム教や奴隷貿易が関わるのは予想していたが、紅茶に砂糖を入れるようになった理由まで教わるとは思わなかった。川北さんはイギリス近世史が専門なので、その辺も詳しい。面白かった。

 いまはどうなっているのだろうか。当時のサトウキビの栽培は、土壌が消耗して土地が荒れるために、常に新たな耕地を探す必要があった。加工には、工場による集団労働を必要とした。よって、奴隷や、強制的に働かされる人が必要だった。気候的に栽培に適したカリブ海に先住民に代わってアフリカからの奴隷が多く連れてこられるようになった。

 ヨーロッパでは十字軍がきっかけでサトウキビの栽培と製糖技術が伝わることになる。とくにポルトガルがアジアに進出して、日本にも金平糖やカステラが伝わってきた。しかし、ヨーロッパが植民地に造ったプランテーション社会は、サトウキビならサトウキビとほぼ「一品主義」で、ヨーロッパに出回るのが普通だったという。植民地のプランテーションを持つ者は王族以上に潤う者もいたとのことだ。

 イギリスの産業革命も、奴隷や砂糖商人の富の力によるという主張もあるという。当時は、砂糖同様にお茶も高級品だったらしく、お金持ちは富のシンボルとして、高い紅茶に高い砂糖を入れることで、自分の富をアピールしていたとか。今の人たちには想像もつかない理由だ。

 この本は、砂糖を歴史を語るとともに「格差」が生じた過程も教えてくれる。あとがきを見ると、1996年あたりの本だが、今でも十分に通じる本である。中学生あたりなら一度は読んでほしい気がする。その他、英国においてコーヒーハウスがサロンのような働きをしながら廃れていき、フランスではカフェが盛んになった話なども面白い。