雑誌「暮しの手帖」は割と長い間購読している。外見と不釣り合いらしく、携えて歩いているのを見た同僚に「意外」と口にされたこともあった。料理も裁縫もしないが、読み物も面白いし、料理の写真にほっこりさせられることもある。生活情報が満載で実に楽しいのだ。この雑誌の創刊者が花森安治さんだ。
この本はいわば「名言集」のようなもの。「暮しの手帖」や「朝日新聞」などに載った文章をまとめてある。刺さる言葉が満載だ。いくつか紹介しておく。
暮しと結びついた美しさが、ほんとうの美しさだ。
バラの花とどぶねずみをくらべて、
バラが美しいというのなら、わかるが、
だからといって、ローズ色のほうが、
暗いグレーよりが美しい、ということにはならない。
色というものには、どれが美しくて
どれが汚い、という差はないのである。
今も通じそうな言葉もある。
政党や政治に、
けじめがなくなったときが、
独裁者のいちばん生まれやすいときである。
〈国をまもる〉とか、
〈国益〉とかいいます、
そのときの〈国〉という言葉には、
ぼくらの暮しやいのちは
ふくまれていないはずです。
Tシャツ派なので、共感を覚える言葉もある。どちらかというと、かわいそうだと思ってしまうのだが。
中身のからっぽなヤツほど、
真夏にネクタイをしめたり、
しめさせたりしたがる
一段と紛らわしい記事型広告が増えてきたが、ずいぶん前からあったらしい。
新聞の命は、記事である。
いくら広告料がほしいからといって、
一見記事とまぎらわしい広告、
記事だと思いこんで、
読まれるような広告を
平気でのせて、
果して新聞の面目は、
どこにあるのか。
正論が煙たがられる時代になってきたような気がするが、読んで背筋が伸びたような気持になった。