晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「世界史への扉」

 ロシアのウクライナ侵攻。もしかしたら、また地球儀を買い換えないといけなくなるのかもしれない。望まぬ形の国境線の「変更」もありうる。世界地図って変わるものだって意識し始めたのは、1980年代後半の東欧革命から端を発したドイツ統一からだと記憶している。その後に見た世界地図でドイツの色が統一されているのを見て、地図って変わるんだなと思った。日本では昭和天皇の逝去もあったが、時代の大きな変化を体感していることに興奮を覚えたものだ。まあ、「体感」と言っても報道などで動きを感じただけなのだが。でも、「歴史」というライブ会場にいる雰囲気はあった。コロナやウクライナと、現在もある意味そうなんだけど。

 歴史学者樺山紘一さんのこの本は91年の刊行。週刊朝日百科というテーマ別に雑誌を買い集めて「百科」にするという企画があって、「世界の歴史」「日本の歴史」に寄せたエッセイをまとめた本だ。「時代をよむ」「事件をよむ」と二つに分けてある。

 紀元前、紀元後。キリストの生誕から逆算したり、そこから数えたりするというのは、信者でもない人にとっては確かに変な話だが、何か当たり前のことになっている。当初は、キリストのいない暗黒と光明とみなされていたが、徐々に年号の基点とした中性的な性格を帯びるようになってきたそうだ。

 中世という言葉もそうだ。欧州の中世というのはほぼ見解が一致していて、476年の西ローマ帝国の解体から15世紀末にいたる千年間がそれにあたるそうである。中世が古代と近代の間と考えると、国や地域によって中世とされる時代は違ってくるだろう。中国なんかは、欧州よりも前倒しされるとみる人がいれば、10世紀ごろから始まると考える人もいるのだという。ルネサンスもしかり。樺山さんは、18世紀の日本にも「ルネサンスの名を冠してもよい」と書いている。

 高校生になった子どもは「歴史総合」という科目で歴史を習っている。教科書を見ていないので正確にはわからないが、近現代史を中心に世界史や日本史を横断する形で、関わりや類似点、もしく差異などを考えさせるようにするという。

 いまから30年も前の本だが、すでにそのような視点で書かれていると思った。