晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「裏横浜」

 タイトルにつられて読んだのは間違いない。著者の八木澤高明さんの作品も読んだことがない(ただし、「黄金町マリア」という本の題は覚えている)。自分が住んでいる地域にも触れているし、新書なら値段もそれほどでもない。という理由で手に取った。「裏」というほどのディープさはなかった。まあ、「陰」くらいかな。知らなかった話もいくつかあった。

 八木澤さんの自分史的な部分を交えながら、横浜を語っていく。といっても、市としては大阪市よりも100万人も人口が多いしとても広いのであるが、ほぼ中区に絞られている。あとは、鶴見区磯子区、南区あたりか。

 本編は、横浜スタジアムが以前クリケット場だったことから始まる。ちょっとした縁だが、そのクリケット場が移転した先が近所にある。もちろん、クリケット専用ではなく野球もサッカーもラグビーもやっている。というか、クリケットをやっている方がまれである。ランニング中にクリケットをしているのを見ることがあるが、プレーしているのは、インド系の人たちが多いだろうか。野球場に変わった後も、戦時中は捕虜収容所だったとのこと。

 いわゆる外人墓地。山手の丘にあるのが有名だが、そこからやや離れた山手駅の近くにも根岸外国人墓地がある。八木澤さんも触れているのが、作家の山崎洋子さんも、こちらの外国人墓地の方は、米国人と日本人の間に生まれた嬰児が大勢埋葬されていると書いていた。先に帰国されたりして、育てるのに困ったのだろうか。混血児に対する偏見なども理由にあったかもしれない。そのような話は不都合らしく、どうやらあまりオープンにしたくないようである。横浜にはほかに外国人墓地が、中華義荘と英連邦戦死者墓地と計4つあるが、根岸外国人墓地が一番入りづらいというか、いつも門が閉じてある(通用口から入るのか)。

 その他、美空ひばり、ブラジル移民前のアントニオ猪木京浜東北地帯、沖縄、寿町などとそれぞれのテーマでも一冊の本になりそうな(実際、本が出ているが)話がコンパクトにまとめられている。すでに伊勢佐木町有隣堂には平積みになっているが、どれほど売れるだろうか。