晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「カモメの日の読書」

 どこで読んだのか忘れてしまったが、フランス在住の俳人漢詩のエッセイを書いていると知った。なんかミスマッチ感が気になって、近くの書店で探しても見つからない。だいたい小津夜景さんって何者なんだ。気になる度が高かったせいで、ついネットで注文。読んでみた。

 「はじめに」に、編集者と著者とのやりとりが載っている。言ってみれば、この本のコンセプトがそのまま書かれている。編集者は、すっかり人々と縁遠くなってしまった漢詩と日常生活を気負わない形で結びつけるようなものを書いてほしいと依頼する。実際は、小津さんはそのような形で、いろいろな漢詩を紹介する一方で、在フランスの生活を垣間見せてくれる。

 漢詩が横書きで書かれていて、すこしとまどった。著者は、短歌も都都逸も詠むらしいが、俳句も短歌もこの本ではすべて横書き。昔、七言絶句とか五言律詩とかを授業で習った時は、縦書きだったせいなのか、横並びの漢詩はただの漢字の羅列という感じ。不思議と頭に入ってこないが、これには著者の訳詞がついているのでそれに任せた。王安石とか蘇軾とか杜甫とか、こんなに意識させられたのは数十年ぶりか。漱石頼山陽などと日本人が書いて漢詩もいくつか紹介されている。

 漢詩は古いだけあって(現代漢詩というのもあるのだろうか)、自然や食・酒をテーマにしたものが多く、字面だけではとらえられないものの、ストレートに訴えてくるものが多い。いいな、漢詩って、と少し思ってしまった。歳なのかな。岩波で何冊が中国の詩集はあるが、江戸時代の漢詩も良さげである。当時の教養のひとつだったかもしれないが、外国語で詩を作るってなかなかできることじゃない。

 エッセイからは小津さんのフランスでの生活がうかがえる。どうも武術のたしなみがあるようで、痴漢と格闘したと書かれていた。何者なのだ、この人は(綾瀬はるかか?)。そういえば、「フラワーズ・カンフー」なんて著書もあったな。結構、その筋もイケる人なのかもしれない。ちょっとアンダーグラウンドのにおい。今後も気にかけておきたい。いまは、ちょうど日本に戻ってきているらしい。