晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「世界を、こんなふうに見てごらん」

 日本に動物行動学を紹介した日高敏隆さん。たぶん、この本が最後の著作ではないか。自分史的なエッセイでもあり、自然との付き合い方を示すような内容になっている。集英社文庫の夏のキャンペーンで並んでいるのを見て購入したのだが、夏休みに小学生高学生あたりが読んだら良いような本だ。表紙は、今年のキャンペーン用に Noritakeさんが描いている。それにつられて買った部分もある。

 日高さんは、科学に対する過信に警鐘を鳴らしているように見える。科学によって正しい世界が見えるという信じ込む人間にならずに済んだ、と書いてある。相対化する材料の一つとして科学を考えろと。科学に頼るのではなく、頼れないと自分の判断が不安になったりもするが、そこをもがきながら耐えながら生きていくのが、それが人生として楽しいのだと書いている。

 コスタリカを訪れた話が興味深い。書いた当時の話で今はどうかわからないが、この国には地球上の動植物の約5パーセントが集中しているとのこと。これが多いか少ないかわからないが、たぶん多いのだろう。国土の4分の1が国立公園や自然保護区だそうである。しかし、日高さんの感覚では、「一回、人間がかなり優位になったことがある場所」。人が入ったらそれはもう自然ではない。でも、ほかの動物たちはたぶんそんなことを考えずに、自然の一部になっている。人間とは自然にとってなかなか難しい存在である。そういえば、「人間はいちばん変な動物である」なんて著作もあった。

 ちなみに、コスタリカでは一般の人が昆虫を捕獲してはいけないことになっている。日高さんはこれにも異議がある。やはり、自然を知るには触れることだと。昆虫を採集してコレクターになる必要はないが、「見て知る」者になってほしいという。それが、自然を破壊する道から脱することにつながると書いている。