晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「大きな 大きな 大きな 足あと」

 絵本を読んだ。ひらがなやカタカナが多用されてところを見ると、子ども向けなのだろうが、大人にも十分耐えうる内容になっている。というか、先に読むべきなのは、もしくは、行動に移すべきなのは大人なのだろう。そんな絵本だ。

 副題は「もし全人類がひとりの超巨人だったら」。今や80億人と膨れ上がった人間の人口。それを一人の人間として合体させる。身長は約3キロメートルになり、体重は3億9千万トンになるとのこと(毎秒130キロずつ増えているそうだ)。身長などは単純に足し算をしたわけではなく、粘土のようにひとかたまりにして、それで一人の人間をつくるという方法なので、このくらいなのだろう。

 なかなか面白いアイディアだ。他の生き物や食料などを合体させると人類の肥大化が簡単に感じられるような、一目でわかる統計学的な手法だ(この手の学問は苦手だが)。目はサッカーグラウンドと同じくらい。鼻の穴にはロンドンの52メートルほどあるネルソン提督の記念柱がすっぽり入ってしまう。作者の兄弟(ロブ・シアーズとトム・シアーズ)はどうやら英国人らしい。ちなみに髪の毛は1本20センチの太さになるとか。脳は1千万トン、一度の小用でベニスの運河がいっぱいになってしまう。

 ほかの動物ならどうなるのだろう。野生のトラは体長44メートルになるそうだ。恐ろしいが、思ったほどの大きさではない。野生のトラは4千頭程度しかいないという。そうなると、合体人間の親指の爪に乗ってしまうほどの大きさにしかならないとのことだ。「合体サイ」は合体人間の眉毛に隠れてしまうほどの大きさにしかならない(80頭程度)。「合体ホホジロザメ」はシラス一匹みたいなイメージだ。

 ケンミジンコという海の微生物は、全種類を合体させると身長15キロ以上になるようだが、体重のほとんどは海水だそうなので、動物としては(合体後は)人間が一番大きいかもしれないと書いている(絵本だから、描いている、かな?)。

 後半になると、採掘や伐採などのデータが入ってくる。1年間に切った木を合体させると、英国を起点にした場合はドーバー海峡に橋ができるそうである。トイレットペーパーだったら3300億個分、本棚をつくると高さ8キロになるそうだ。そして、地球上の生き物を合体させると、そして、ごみを合体させると、と絵本を読みながらも問題提起を受けている気持ちになってくる。

 こうしてみると、シビアな内容。合体させるというアイディアは、自分たちも全世界の人間の一部だと実感させるためなのかもしれない。よりよい「一部」になるために何ができるか。そんなことを考えさせられた。創元社の大型本や翻訳本のチョイスには毎回うならされるが、これまた面白い素材を見つけては日本版を作ってくれたものだ。ちなみに、訳はきたむらさとしさん。