久しぶりにCDを買った。しかも2枚も。
テレビ番組で彼らを見たのがきっかけだ。T字路sという男女のグループ。二人なのでデュオというべきか。ボーカル兼ギターの女性(伊東妙子さんだそうだ)の歌声が刺さった。水道の蛇口を開ききったような歌声。小細工なんてしないよというメッセージが込められているような。
Kpopなんかもそのように作られているそうだが、近年の曲はイントロ短めですぐ曲に入るそうである。それでいて曲がやたら複雑な進行で、音符から言葉がこぼれ落ちそうな曲が多い気がしている。実は最近の曲はあまり聴かないのだが、そういう印象だ。
このT字路sの曲は昭和レトロ路線というか、言葉をしっかり伝えるというか、近年の曲の作りの逆張りというか、50代の親父に刺さる曲ばかりである。比較に無理があると思いつつも、フェアグラウンド・アトラクション「ファースト・キッス」(原題:The First of A Million Kisses)を思い出した。
どうやらカバーに定評があるようで、「Tの讃歌」のほかにもカバーアルバムを2枚出している。検索してみると、カバーのみかカバー中心のツアーをしていたようである。選曲を見ると、昭和生まれにはそそる曲ばかりだが、3枚とも買う財力はないので、オリジナル1枚、カバーアルバムを1枚を購入した。やはり、オリジナルは聴いておこうかと。
オリジナルが「T JIRO s」。歌詞だけでバンドの説明がないので聴いたままを書くと、「煙草」「コーヒー」「交差点」「踏ん張る」「渡り鳥」なんて言葉が聞こえてくる。これだけでどこか昭和をイメージしてしまう。カバーの「Tの讃歌」の方には、選曲の理由みたいなのが短く記してあり、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドが好きだそうである。
「Tの讃歌」には、「銀座カンカン娘」「時の過ぎゆくままに」「襟裳岬」「愛の讃歌」などが収録されている。ほかのカバーアルバムには「愛のメモリー」や「熱き心に」などが入っていて、伊東さんを媒介するとどのような曲になってしまうのかが妙に楽しみである。なんというか、元阪神の藤川球児のようにストレートを投げるってわかっているのに、それでもそのストレートがみたいと思うような。そんな気持ちに近い気がする。