最初はシネマ・ジャック&ベティから送られてきたチラシで見たのだろうか。新聞の記事を読んだときには存在自体は知っていたので、SNSで知ったかもしれない。とにかく横浜に新刊書店がオープンしたという報に接した。昨年11月だそうである。屋号は「本屋 象の旅」。ポルトガルの作家サラマーゴの作品から頂戴したという。外国文学好きにはいかにも期待できる屋号だ。
それとなく場所はわかっていたものの、なんとなく自信がないので、ランニングついでにいくことにした。道に迷ってもランニング中なら「練習」として納得ができる。家からは約5キロほどだろうか。割と簡単に見つかった。
おお、ここか。絵本がこちらを向いている。ガラス窓越しに見える棚が美しい。どことなく余裕を持たせた本棚。テーブルに表を向けて本を置くというのも意外とおしゃれである。店主は結構繊細な人なのかもしれない。配置は素晴らしい。
奥にある棚を左から右へのぞいていく。海外文学が多い。そこに海外事情の新書などを間に入れている。ムラルチク「カティンの森」と渡辺克義「物語 ポーランドの歴史」を並べておいてあるような感じである(実際にそうだった)。思わず買ってしまいそうになるが、ランニング用のポーチに入れた金はそう多くない。もう少し見極めないと。
イタリアの作家ブッツァーティの本もあるじゃないか。有隣堂の本店には置かれたこともないと思われる作家である。9坪と小規模ながら恵文社一乗寺店に来ているような気持ちになってきた。作家の全作品をそろえているという感じはない。ヘッセなら「郷愁」「クヌルプ」の新潮文庫がおいてあり、訳者が違う同じ作品を置いていたりもする。
絵本、食、紀行、本についての本なども置いてあるが、やはり外国文学系が多いような気がする。うれしいが、日本における外国文学ファンは2千人とも言われている。SDGsじゃないが持続可能かどうかが心配である。
時間が許す限りこの書店で本を買おう。月一万円がいいところだが、できる貢献と言えばそのくらいだ。不思議なもので、この書店に行こうと考えるとついでながら周辺の店も気になったりする。近くの銭湯に入ってみようとか、こんどこの蕎麦屋に入ってみようとか、書店の帰りにこの立ち飲み屋で買った本を読んでみようとか。書店は拠点になりうるのだなと実感している。
ちなみに屋号になった「象の旅」はオープン2カ月で72冊売れたそうである。自分も購入した一人。いずれ本の感想を書きたい。