晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「現場で役立つ 鉄道ビジネス英語」

 見るからにニッチな本である。初めて見たのは、JR桜木町駅構内の書店。レジの横にこの本がたててあった。「現場で役立つ 鉄道ビジネス英語」。誰が読むんだこんな本。誰が学ぶんだ「鉄道ビジネス英語」。撮り鉄、飲み鉄などの鉄道ファンがいるのは知っているが、「英語鉄」というのは聞いた事がない。

 タイトルからすると、鉄道会社で働く人向けに書かれた英語学習本であろう。読んでみると(結局買ってしまったのだが)、いわばターゲットは、国内の需要はもはや限られているので海外に打って出ようしているJR東日本とグループで働く人。もしくは、同様の目的を持つ同業者か。編著は、東日本旅客鉄道株式会社国際事業本部。語り口も、どこか「社内向け」に書かれた文書のような口調である。

 鉄道用語は英米に違いがあるけれど、一般にイギリス英語が通じやすいとか、日本語から直訳したような英語では相手がピンと来ない場合があるなどと書かれている。著者が複数なのかどうかはわからないが、経験則に基づいて記していて、「事件は現場で起きている」というのが、良く伝わってくる。

 第4章以降は、鉄道のみならず、他の英語に関わる仕事をしている人でも参考になるのではないか。もちろん、例としてあげられているのは鉄道関連なのだが、Googleを駆使したフレーズ検索やワイルドカード検索を使えば、その分野でどのような英語が使われているかが検索結果として参照できる。他ジャンルでも自分の仕事の事例と近いものをさがして、そこに落とし込むようにすれば、かなり「通じる」英語になっていくはずである。

 読んでいて困ったのが、日本語の鉄道用語をよく分っていないこと。鉄道における「配線」は、線路の配線であって電気の配線ではないし、「改札」も施設と業務と2種類ある。本では、翻訳会社は専門家じゃないのでそのような「用語の取り違え」に注意するように書かれている。そりゃ翻訳会社だって英語ができる人がいるのだろうが、各分野に万能ってわけではない。無理もないだろう。

 「~など」の訳し方は、昔習った事がそのまま書いてあって非常に懐かしく思った。確かに、etc. や and so on を使って朱を入れられた記憶がある。逆に英文ではあまりみかけないし、使い方の概念みたいところが日本語話者と英語話者でそもそも違うのだろう。日本語の「など」は断言を避けて、他にも可能性があることを無難ににおわせておくような感じがする。

 ボリューム的にも2600円は高いが、それなりに面白い本であり、英語として正しいというよりも、相手に通じる英語を導き出す手法としては、特に後半部分は一般の学習者にもヒントになる部分が多いとみた。