晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「一日一言 人類の知恵」

 古書店で200円で購入した本。すべてではないが、著名人(偉人というべきか)の生没日にあわせて、ごく簡単な略伝と肖像、そして著作物がある人はその一部分を記している(キュリー夫人については、子どもが書いた伝記から抜粋している)。「ジュネーブ会議」のようにインドシナの休戦が成立した日を載せている場合もある。ちなみに1954年7月21日。美術作品も扱っている。

 編者は、桑原武夫さんでフランス文学研究者。俳句に関した本や紀行文を残している。近年はあまり名前を聞かなくなったが、自分が社会人になった頃はまだ翻訳書などがいくつか目につく場所にあった気がする。この本の発行は1956年で、買ったのは89年で50刷なので、ロングセラーだったのだろう。

 中国の人の割合が高い。中国の学問や漢詩が教養とされていた時代だったのだろう。杜甫や蘇東坡はわかるが、王船山(思想家)や李義山(詩人)は知らなかった(変換で名前が出てこない人もいる)。中国関連については人の協力を得たらしい。今なら、こんな割合にならないと思われる。現在のロシアの作家も多い。チェーホフとかプーシキンとかロシア文学は、かつては身近な存在だったのだなあ。

 取り上げられている人物で、発行当時に唯一存命だったのが郭沫若。日本とのゆかりが深い人だ。この人に関しては、編者に贈られた詩が載っている。

冬風重暖意/陽春巳不遠/嶺上見梅花/微笑看人間

 人は状況の悪さのみを語るが「春」は遠くない。梅はすでに春であって人間社会を見つめている、といった意味だそうだ。戦争やコロナに重ねるつもりはないが、いろいろと好転してほしい事柄が多い。

 本では「エディソン」として記しているが、有名なエジソンは例の言葉。「天才とは天があたえる1パーセントの「霊感」(インスピレーション)と、彼が流す「流汗」(パースピレーション)の99パーセントとから成るものである」。「霊感」が「ひらめき」、「流汗」が「努力」として後世に伝わっている。ちなみに、1931年10月18日没。

 個人的に好きな言葉は、世阿弥元清の「上手にもわるき所あり。へたにもよき所かならずあるものなり」。たぶん、この人の場合は生没が分からないので、適当なところに埋めたのではないか。6月17日の欄に載っている。

 このような本は一気読みはもったいない気がする。他の本に疲れた時や、仕事の合間に開くのにちょうどいい。読み終えて、気に入ったお菓子が空になったような気分になった。