晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「英詩のわかり方」

 ちょっと背伸びして英詩を読んでみた。自分が普段目にする英語とはまるで違う単語が出てきて、詩自体は短いのに散文以上に辞書をひく回数が多い。Roger McGough というユーモラスな詩人の本だったのだが、そのシャレとなっている部分が辞書をひいてやっとうなづけるというレベル。どこか落語のオチを説明を受けて合点するのに近いものある。笑える部分もこうなると笑えない。

 で、手に取ったのがこの本と言いたいところだが、実は少し手をつけはじめていた。思った以上に英詩が手強かったので、真剣に読んでみようという気にはなったが、これを読んだからって、急激に英語力が伸びたり感受性が強くなったりするわけでもない。でも、英詩の鑑賞よりは少し踏み込んだ本であることは確かである。

 章立てが挑発的だ。「英詩は失敗する」「英詩は問答する」「なぜ英詩は偉そうにきめつけるのか」「英詩は嬉しい」など。そもそも大学生相手の講義から成った本なので、「つかみ」として書いている部分はあるのだろう。著者の阿部公彦さんは東大教授(執筆当時は准教授)だが、小説も書いた人だ。そこらのアカデミックな先生方とちょっとアプローチが違うようにも感じる。

 取り上げている詩人は、シェイクスピアやディキンソン、ワーズワスやホイットマンといったところから、知らなかったシルヴィア・プラステッド・ヒューズの二人。カップルだったときがあったという。T・S・エリオットって米国生まれで英国国籍を取ったのか。昔、どこかで読んでいたような。でもずっと忘れていた。

 それぞれの詩人の人となりを知り、詩を鑑賞して、ちょっとわかった気にはなったが、正直ハードルが高い。収録されている詩を読むだけで一苦労である。でも、なんか興味を持てそうな詩人がいた。アイルランドシェイマス・ヒーニー

 阿部さんの説明によると、政治的な状況に飲み込まれずに独自のスタンスを保ち続けるため、何重にも屈折を経て政治と向き合うという方法をとったそうである。その分、もっと政治にコミットしろと批判もあったようだ。収録された詩は、どこか草野心平さんを感じさせる(勝手な解釈だが)。この人の詩にはどこか向き合えそうな気がしている。発見と言えば、それが発見。英語力が足りなくて、本の良さがわからなかった気がしている。