晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

かなぶん寄席 講談「お富の貞操/小田小右衛門」

 神奈川近代文学館に行って講談を聞いてきた。「かなぶん」というのは神奈川近代文学館の略称のようだが、頻繁に開催されているわけでもなく、ここ10年は講談師の神田蘭さんが年に一度出演している。僕は昨年が初めての参加。寄席で聞いたことはあったが、講談を単独で聞くのは初めてだった。なんと言っても千円(神奈川近代文学館友の会会員。一般は千二百円)は魅力的。「文学」なので、ひとつは文学ネタを入れている。昨年は与謝野晶子樋口一葉だったはず。もしくはどちらもやったような。

ポスター。写真は使い回し

 今回の出し物は、「お富の貞操/小田小右衛門」。で、おまけとして「北条政子」。「お富の貞操」は芥川龍之介の短編。芥川は結構読んでいるつもりだったが、この話は初めて。「小田小右衛門」は「赤穂浪士義士外伝」から、昨年もひとつはこちらから選んでいたと記憶する。講談の世界では、真打ちレベルなら誰でも語れるようなベタなネタとのこと。

 神田蘭さんは神田紅さんの弟子だそうで、そもそも女優さんだったそうだ。舞台女優のような演技はそちら仕込みか。役作りの仕方は、なんとなく友近さんを思い起こさせる。10年くらい「かなぶん寄席」に出ているそうで、ほぼホームグラウンドという感じだろうか、暴れまくりという印象である。芸には厳しいらしく「鬼軍曹」というあだ名もあるそうだ。

 「お富の貞操」の舞台は戊辰戦争時の上野。いわゆる上野戦争前夜。近辺の住人は立ち退くのだが、女中のお富は猫の三毛を連れてこいと主人に言われて、無人の家に行くとそこには乞食の新公が雨宿りで家で寝ていた。新公は短銃をつきつけて、猫がほしければとお富の体を要求するという話だ。ロマンス文庫じゃないので、変な話にはならないのだが…。

 「小田小右衛門」は、討ち入りした赤穂浪士大石内蔵助介錯役となった小田小右衛門。切腹の際に身分を問われ、足軽介錯されるのはしのびないであろうと思い、つい物頭役と噓をついてしまう。命日にはその格好で大石の墓参りにいった小田がいわば格上の上司ともいうべき人間に見つかってしまう。身分を偽るのは御法度とされていた時代。小田の運命は…。どうやら、これはショートバージョンのようで、たぶんもっとじっくり聞かせる話なのかもしれない。

 神田さん曰く、講談は「真実が5割、脚色が4割で1割が噓」だそうであるが、このように講談にして演じられると頭に残るし、芥川の短編にも読んでみようかと興味がわく。時間が許せば、またいってみよう。別な講釈師のネタも聞きたくなってきた。