書店は間違いなく減っている。例えば、わが町。最寄り駅の商店街には新刊書店2軒と古本屋が1軒あったが、たぶん30年以上前に新刊書店が1軒になり、15年くらい前にまた1軒減り、今は古本屋が一軒のみとなった。とはいえ、独立系と呼ぶべきか、個性的な書店が周りにもポツポツと増えてきている。大勢としては逆境の中、個性的な書店が現れていることは大歓迎だ。
本の雑誌社が昨年出したこの本には22人(共同経営者含む)の書店開業と運営にまつわる話がまとめられている。漠然と書店経営、一人出版社の夢を抱いていた自分にはまぶしい話だが、これから書店経営の道を歩もうとするひとたちにとっては、道筋を示すガイドブックにもなるだろう。書店経営に必要なことや仕組みみたいなものも書かれている。書店は確かに大もうけできるようなシステムにはなっていないようで、本の売り上げの2割か3割で働き手の生活や書店を維持するのは並大抵のことではないはずだ。カフェを併設したり、文房具やグッズを売ったり、新刊よりは利益が出る古本を売ったり、逆に書店だけでは持たないと別に仕事をもったりして、書店を維持している。知らないことではなかったが、改めてこのような情報にまとめて接すると、書店経営にあこがれながらも胸の奥で「やらなくて良かったのでは」「甘かった」と思っている自分がいる。
22人もいると、本への愛情や経営哲学みたいなものにもちょっとしたブレがある(当たり前だけど)。書店は文化と考えている人、購買者と接することに喜びを感じている人、本を読む機会を作ろうとしている人、書店は大変だからと知った上でしっかり準備期間を設けた人、書店は儲からないからと食べていけるように農業を先に学んだ人など。
「本屋・生活綴方」(この本を買った場所)や「ポルベニールブックストア」はすでに行っているが、通える場所にある書店には一度顔を出したいと思った。1冊でも本を買って、カフェがあるならビールかコーヒーでも飲みたい。盛岡のBOOKNERDは昨年だったか、盛岡がニューヨーク・タイムズの行くべき旅行先に選ばれて、何度かテレビで見た記憶があり、思いを募らせている書店の一つだ。ちょっと遠いが、田舎が福島だし仙台あたりまで足を伸ばすこともあるので、もうひと踏ん張りすれば行けなくもなさそうだ。葉々社(大森)は会社の帰りにでも寄れそう。三鷹のUNITEも中央線沿いに向かう機会がきっとあるだろう。大和市(神奈川)の冒険研究所書店は名前からして一度は訪ねてみたいところだ。ランニングや銭湯巡りとともに、外に出るモチベーションになる。