晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心にお出かけもあり。銭湯通いにはまっています

「木の栞にぶら下がる」

 ハン・ガンさんがノーベル文学賞に輝いた。ボブ・ディランはともかくとして、英語圏の作家は読んでいたり名前くらい知っていたりすることもあったが、非英語圏であらかじめ読んでいたのはたぶん大江健三郎さん以来かもしれない。オクタビオ・パスさんあたりがちょっと微妙。

 韓国文学となると、やはり思い浮かぶのは斎藤真理子さん。「菜食主義者」は別の翻訳者だが、他のハン・ガン作品はほぼ斎藤さんが手がけている。で、この機会に斎藤さんの読書エッセイを読むことにした。1年くらい前に購入したのだけど、向き合うタイミングを逃していた。タイトルがいい。「本の栞にぶら下がる」。

 「図書」で連載。書店のレジから持ち帰ったことが何回があったので斎藤さんが連載していることは知っていた。同時に体調を理由に休載があったことも。日比谷図書館での講演を予約していたら数日前にキャンセルになったことがあったのでその頃だろう(後日、振り替えがあった)。仕事に関係する本以外はほとんど読めない時期が20年あったと書いてあるが、結構な量を読んでいるし、読み方が深い。

 まずは「チボー家の人々」(マルタン・デュ・ガール)。揃えて持っているがずっと積読していた本だ。斎藤さんは「チボー家」から高野文子さんの「黄色い人」に話を持って行く。そうだ思い出した。この本を買った帰りに、この出だしを読んで、すぐに高野さんの漫画を数冊買いそろえて読んだのだ。で、そのままこちらの本を置いてしまった。ちなみに装画は高野さんによるものだ。

 本には、林芙美子に郷静子、森崎和江と名前は知っているがなじみのない作家が紹介されている。そういえば、講演の時に、機会があれば読んでほしいと話していたのは高良留美子さんだったな。ハン・ガンさんの事は必ず木や植物の描写が出てくると話していたような。

 20世紀初頭の韓国作家は日本語が出来る人も多い。歴史的な経緯もあって、尹東柱(ユン・トンジュ)や李光洙(イ・グァンス)などなど。今は韓国の現役組を追うだけで精いっぱいだが、いずれここらへんもカバーしたい。割と翻訳されているようだ。入手可能かどうかはわからないが。

 いわゆる岩波的でない作家も読んでいる。田辺聖子さんや森村桂さん、韓国語を学習した人は読んでいることが多い長璋吉さん。斎藤さんの趣味は編み物だそうだが、編み物に合う本も紹介されている。夏目漱石吾輩は猫である」はOKだが、森鷗外はダメ。「編み本」と読んでいて、物語性があるものや、著者の日常が見えるエッセイなどがいいそうだ。最も活用したのは谷崎潤一郎細雪」だそうだ。編み物をしない自分にはわかるようなわからないような。

 しっぽりと読書の世界に浸れた。翻訳もいいけど、このようなエッセイもたくさん書いて欲しい。無理のない程度で。