晴走雨読 横鎌日記

無理しないランニングと気ままな読書について綴ります。横浜と鎌倉が中心。映画やお出かけもあり

「傷だらけのカミーユ」

 ピエール・ルメートル「傷だらけのカミーユ」を読了。これで、カミーユ・ヴェルーヴェン警部を主人公とした三部作はすべて読んだことになった。巻末の池上冬樹氏の解説によると、長編はこの3作だが、中編が残っているらしい。池上氏が言うように、これだけ人気となると、続編やスピンアウトものを書かざるをえないかもしれないし、むしろ期待したい。本作とともに「悲しみのイレーヌ」「その女アレックス」の高評価が飛び交っている割には、ルメートル自身についてはあまり知らない。詳しく追っていないだけかも知れないが、作者のインタビューは是非読んでみたいものだ。

傷だらけのカミーユ (文春文庫) (文春文庫 ル 6-4)

傷だらけのカミーユ (文春文庫) (文春文庫 ル 6-4)

 

  映画化必至というシリーズだが、主人公ヴェルーヴェンの身長は145センチなので、なかなかそれらしい俳優を見つけるのは難しいかも知れない。CGを使ったり、設定を変えたりすればいいだけかもしれないが、これといって浮かんでくる俳優もいない。

 前置きが長くなったが、この「傷だらけのカミーユ」。ヴェルーヴェンとつきあっていたアンヌが強盗に暴行を受けて重傷を負ってから、結末までの3日間を描いている。章立ては時間で記され刻々と事が進んでいく、前二作とはまた違った緊迫感のある作りだ。

 アンヌが宝石店に向かう道で襲われたと知った、ヴェルーヴェンは彼女との関係を周囲に内緒にして捜査を進めるが、感情が先走って強引さが目立ち、その捜査方法で警察組織内でも追い込まれる。なぜアンヌは狙われたのか、それとも偶然襲われただけなのか。捜査を進めるヴェルーヴェンは、犯人たちの真のターゲットを突き止めていく――。

 前二作の記憶が多少薄れていても、単品として十分に読める。相変わらず、暴行を受けるシーンや傷口の描写は細かくて、時に想像してしまい、目をおおいたくなるような気分にさせられるが、いつの間にかルメートルの世界に引きずり込まれているのが自分でもわかる。

 そのサポートをしているのが、橘明美氏の訳で、日本語で書かれた作品のように読める。原文を読めないのでよくわからないが、3作目となり、踏み込んで訳されているような印象だ。完全にルメートル節を掴んでいるという気がしている。

 続編は望むものの、一応の完結編として、「人間・ヴェルーヴェン」が浮き彫りにされた一作のように思える。