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晴走雨読 横鎌日記

無理しないランニングと気ままな読書について綴ります。横浜と鎌倉が中心。映画やお出かけもあり

「この世界の片隅に」

 

 じんわり、戦争の怖さが伝わってくる。そんな映画だった。

 子どもと「この世界の片隅に」を見に行った。映画館は、ジャック・アンド・ベティ。ベティ側の上映だったが、あんなに座席から人があふれているのを見たのは初めてだった。午後1時5分の回で見る予定で、9時頃にランニング&散歩ついでに映画館に立ち寄り、チケットを買っておいたのが正解だった。子どもが2時間、背もたれのない丸椅子で映画を見るのはきついだろう。こんなことで映画館通いが嫌いになっても困る。せっかく、仏キネット社製の座席になったのに。

 広島に住む主人公の浦野すずは、絵が上手な女の子で兄と妹がいる。昭和19年、すすは呉の北条家に嫁ぐことになる。浦野家もそうだったが、北条家も、性格のきつい義姉がいるものの、戦争で食料が不足したり、不自由さが増すなかでも、温かく気持ちの豊かさを感じさせる家庭だ。しかし、ある日の空襲と原爆投下で、そんな生活も――。

 さて、このアニメーション映画についてだが、こうの史代の原作もさることながら、のん(能年玲奈)の声と主人公すずの相性というかマッチングが素晴らしい。やや世間ズレしているやさしいすずの声と、(本人の性格はよく知らないが)のんのイメージがはっきりとシンクロする。原作のマンガは読んだことがないものの、こうの史代のやわらかいタッチと所々クスッとさせる〝昭和なギャグ〟が温かい。戦争の怖さを伝える映画だが、庶民レベルの視点であまりとげとげしいものにしていないのも、この映画のヒットの秘密なのかもしれない。10歳の子どもも、時折クスッとしながら、2時間6分の間、ほぼ終始集中していた。このへんは、こうの史代の原作か、それとも片渕須直監督の力量なのか。

 いい映画を見た、そんな気持ちで映画館を後にしたのは、一度や二度ではないものの、この映画は格別だった。その余韻を楽しむために、子供を連れて、野毛に向かった。いい映画を見た後は、酒もうまい。