晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「哲学ってなんだろう?」

 絵本など判型の大きな本を読む時は、ちょっと贅沢な気分になる。文庫本のように持ち歩く気になれないから家で深く座れる場所をさがし、コーヒーを湧かしたり手を汚さないお菓子を準備したり、せっかくだからと邪魔にならないような音楽をかけることもある。大型本には読み手を「構えさせる」作用がある。

 手にしたのは、英国のDK社のビジュアル本「哲学って何だろう?」。訳は山本貴光さん。「文体の科学」などを書いた人で、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授でもある。ビジュアル本だけど、2200円(税別)でおさめている。昨今の書籍事情からすると割と安いのでは。昔、聞いたことがあるが、この手の本は国際共同出版といって、レイアウトやイラストの配置を変えずに文字の部分だけを各言語に置き換えて同じ印刷所で一緒に刷ってしまう方法をとっていると思う。その恩恵かもしれない。

 「哲学の基本がわかる」そうだ。現実って何か? どうして自分はここにいるってところから、知識とは何か?とか善良であるべきかと問いかけてくる。もちろん、答えが準備されているわけではない。立ち止まって思案するように作られている。

 英国の本が元だからかもしれないが、これまであまり知ることがなかった学者が何人かいる。動物の権利を擁護するピーター・シンガー教授(豪州)、環境問題に影響を与えたという哲学者アルネ・ネス(ノルウェー)など。後者は、自然を制御しようとするのは止めて、自分たち(人間)も自然界の平等な一部としてみる考えをもっていたらしい。ディープ・エコロジーの提唱者とのこと。いまならともかく20世紀からこのような人がいたのか。

 「間違った議論を見分ける」の項は現代社会にも役に立ちそうだ。「藁人形攻撃」というのは柱に藁人形を打ちつけるのではなく、相手の議論を勝手に作りかえておいて攻撃することだそうだ。ここに書いてある例をひくと、「友人と遊びに行かないで勉強しろって? なぜそんなに友人を嫌うの?」と本題がずれることを言うらしい。確かに長い人生の間には、このようなことを言う人に一度や二度は会ったことはある。

 絵本ながら相当頭は疲れたが、哲学の歴史と現在の問題点が少しばかり見えてきたという成果はあったような気がする。「分からないことを楽しみながら、何度も読むのがコツ」らしい。頭の体操にはいいかもしれない。