晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「本、そして人」

 岩波文庫で出ているマルクス・アウレ―リウス「自省録」の翻訳者として知られる神谷美恵子さん。NHKの「100分 de 名著」で取り上げられているし、いまだによく売れているらしい。みすず書房からも何冊か本を出していて(著書と訳書)、「生きがいについて」が有名だ。こちらも「100分 de 名著」の仲間入りをしている。

 神谷さんについては、過去に「ハリール・シブラーンの詩」を読んだことがあるが、こちらは翻訳なので、長いこと棚に眠っていた「本、そして人」を引きずり出してきた。本人が書いた本を読むのは初めてだと思う。本や人をめぐるエッセーが中心で、まさにタイトルそのまま。ヴァージニア・ウルフシモーヌ・ヴェイユミシェル・フーコーなど、これからチャレンジするつもりの著者についてはほどよい「予習」になった。ありがたい。

 実は、精神科医であるくらいしか知らなかったのだ。この本の解説を書いている中井久夫さんもそうだが、精神科医で文章が達者な人はたくさんいるので、そのような人かと思っていたら、本格的に学問の道に進んでいた時期があった。

 父についてスイスへ行き、インターナショナル・スクールで学んだ。そのため、フランス語に堪能で、考えるのはフランス語が一番楽だそうだ。そして、古典文学をイタリア語で読んだり、新約聖書古代ギリシャ語で読んだりして学んだそうだ。語学は相当にできたと思われる。しかし、ハンセン病患者の病状にショックを受け、周りに反対されながらも医学の道に進んだのだ。

 ヴェイユやウルフについては、彼女らが書いたものよりは、その生き様について詳しく書かれている。ほどよいガイドブックを読んだ形になった。「五千円札の人」新渡戸稲造についても、家族づきあいがあったらしく、どのような人物なのかがなんとなく思い描ける。その他、書評や、自身や著書や訳書の解説など、一粒で3度、4度おいしい本になっている。いろいろと読んだ気持ちにさせてくれるのが、うれしい。

 フーコーも、若い頃に買って積読になっているのが数冊ある。もう少し物事がわかってから読もうと考えていたが、そろそろ先が見えてきたので手を付けていかないといけないだろう。このタイミングで、ウルフやフーコーに進めれば良いのだが、もうちょっと神谷さんが書いたものを読みたい気がする。