晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心にお出かけもあり。銭湯通いにはまっています

「人文的、あまりに人文的な 同人版#005」下

 前回の続きだが、槇野沙央理さんが気になった。複数の大学で講師として教鞭を執っている方で、専門はウィトゲンシュタインとカヴェル、フェミニズム哲学。正直、カヴェルという人物は知らなかった。検索すると、スタンリー・カヴェルなる人物がいるのでこの人なのだろう。

 槇野さんは高校の時に不登校で通信制高校に移ったそうだ。背伸びしたと語っていたが、ウィトゲンシュタインとフーコーに興味を持った。しかし、フーコーの本は高い。バイトで稼いだお金で買える、岩波文庫のウィトゲンシュタイン「論理哲学論考」と、ウィトゲンシュタイン関連の新書を買ったそうである。若い時は「背伸び」も大事なので親近感が湧く。しかも「論理哲学論考」は生まれて初めて、読めずに捨てた本になった。これまでも「背伸び」はしてきたが、難解さの質が違ったという。その挫折感というべきなのかが、研究のきっかけになったというのが面白い。通信制高校から通信制大学に進み、大学院に進んだとのこと。芸術にも興味があったが哲学にしたようだ。

 ウィトゲンシュタインと聞くと、言語と社会・世界というイメージだろうか。今もわからないが、その昔映像から入ったら多少は理解出来ると思い、映画でデレク・ジャーマン「ウィトゲンシュタイン」を見たのだが、子役のポーズだけしか記憶にない。人物自体を初めて知ったカヴェルを含め、槇野さんが何か本を出すなら是非読んでみたい都の気持ちになった。できれば新書など、比較的安価な本だとありがたい。

 哲劇のあいうえおは、な行。「な」は夏目漱石。少し前に「こころ」を読んだので、どこか印象が新しいが、鷗外派を名乗りつつ、やはり漱石は巨大だと再認識した。山本さんも吉川さんも、「門」「それから」は大人の話と書いている。とはいえ鷗外だって歴史物も書いているし「大人」だと感じるのだが。いずれにしてももう少し漱石を読んでみよと思っていたところを後押ししてくれた。お二人の話だと、漱石入門には「坊っちゃん」「草枕」から「三四郎」「それから」に進むといいと話している。

 「に」は西周。学問用語の訳語(日本語)を作った人だ。「哲学」もそうだし、「科学」「意識」「心理学」「帰納」「演繹」「命題」などなど。今の日本語の中から西周がらみの言葉を抜くと、ほとんど文章や会話にならないのではないか。現在、国書刊行会から「新編西周全集」が刊行されている。全6巻。出ている第三巻が税込み24200円で、なかなか個人では手が出ないと思いつつ、国書刊行会の気骨にも敬意を表したい。

 「ぬ」はぬいぐるみ。「ね」はネット。「の」はノイズ。「ファスト&スロー」のカーネマンさん。共著で「ノイズ」という本も出している。副題に「組織はなぜ判断を誤るのか?」とある。心理的なノイズというのがあるそうだ。早く文庫化されないだろうか。

 Kindle Unlimited のラインナップに同人版の追加が入るのを期待しながらも、たまには動画の方も見てみようかと思った。今回の槇野沙央理さんについてはどんな感じの人なのだろうとの興味から You Tube の方ものぞかせてもらった。