晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「マカロンはマカロン」

  近藤史恵「ビストロ・パ・マル」シリーズの第3弾。相変わらず読後感がいい。カウンター7席、テーブル5つという、下町にあるフレンチを提供するビストロのシェフ・三舟忍が、客が持ち込む悩み事を解決するというシリーズだ。「マカロンはマカロン」は、「タルト・タタンの夢」「ヴァン・ショーをあなたに」の続編だ。

 話を解決するのはシェフだが、語り手はギャルソンの高築くん。「ギャルソン」でピンとこなかったが、いわばウェイターのことだ。「ヴァン・ショー」を読んでから、ずいぶん経っているようだ。「タルト・タタン」と続けて読んだ記憶がある。普段、フレンチに行くことはまずない。どうしても、刺身や冷奴あたりにビール、ハイボール、日本酒を合わせる形が多い。

 ともかく、その前の話のおさらいを軽く交えてくれながら進めてくれるので、前2作を読んでいなくても、簡単にこの世界に誘ってくれる。パターン化されているとも言えるが、なんか気持ちがいいのだ。「来た、来た」という感覚である。それでいて、ちょっとした「裏切り」。いやあ、楽しい。

 収録作は8編。「コウノトリが運ぶもの」「青い果実のタルト」「共犯のピエ・ド・コション」「追憶のプーダン・ノワール」「ムッシュパピヨンに伝言を」「マカロンはマカロン」「タルタルステーキの罠」「ヴィンテージワインと友情」。表題作は、そう来たかと思った。

 人が死んだりはしないが、ミステリー。店に訪れる人の悩みがトラブルが、今の社会を映していて、読書の楽しみとともに気づきもある。続編を望む。