晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「「国境なき医師団」を見に行く」

 「国境なき医師団」。1971年にフランスで発足した、医療援助団体。「国境なき~」(without borders)という惹句は何かと使い回されたりするが、やはり「医師団」がカチッとはまる。正式名称は当然フランス語で、Medecins Sans Frontieres で MFSと略されることが多いようだ。

 いとうせいこうさんは、この団体に寄付をしていた。実は続編の「「「国境なき医師団」をもっと見に行く」で明らかになるのだが、男性用の日傘をメーカーと開発し、そのパテント料が入ったので、この団体に寄付をした。活動に敬意と感謝を込めてのことだろう。それが取材旅行につながった。この団体の活動費は寄付からなっている。なので取材対象国への移動は当然エコノミーで高級なホテルが用意されているわけでもない。いとうさんが向かったのは、ハイチ、ギリシャ、フィリピンとウガンダだ。

 読んでいてぞっとしたのだが、事前に「自分しか知り得ない単語」を封筒に入れて置くそうだ。ある集団が本当に対象を確保しているかどうか確かめるためである。自分たちの主張をアピールするためには手段を選ばない組織もある。恐ろしいことだ。

 医療行為を施すことが目的だが、当然国別にミッションがある。事情が違うのは当然だ。ハイチなら新生児治療、ギリシャには難民が押し寄せてくる。フィリピンでは、性教育が課題だ。現地の男性は避妊が「格好悪いもの」と思っている人もいるとのことだ。ウガンダでは、南スーダンからこれまた大量の難民が流入してきた。南スーダンのリポートは続編に収録されている。

 単純に自分に出来ない仕事をやっている彼らにはリスペクト以外ないが、スタッフだって「聖人君子」の集まりではない。とはいえ、みなさん意識の高い人たちだとは思うが、それぞれ考えに違いはあるはずだ。例えば、傍観者的にサポートに徹するか、それとも、長期的に腰を据えるか。自然災害だって、解決先の見えないレベルの災害が起こることもあるし、難民となれば、その元なる紛争が収まらないとどうにもならない。難民を受け入れる側の態勢の問題だってある。

 もうちょっと知りたいと思うので、続編を読んでいる。書くのは先になると思うけど。「想像ラジオ」もそうだが、いとうせいこうさんはこういうの書くのだよなあ。