晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心にお出かけもあり。銭湯通いにはまっています

ランナーに立ちはだかる横浜の坂② ワシン坂

山下公園本牧を結ぶ車道から中に入ったところにあるワシン坂入口

 2回目はたまに登るワシン坂。本牧方面から山下公園には坂を登らずとも行けるのだが、ランニング中にもうひと踏ん張りと、自分に鞭を入れる時にわざわざこの坂を選択することもある。坂学会のサイトによると長さは660メートル(後日、ウォッチで計ったところ約300メートル。誤記だろうか)。最初はきつめで、登るにつれてやや緩くなる。坂を登るとそこはまさしく山手の住宅地といった感じで、登り切った先には教会や韓国の領事館があり、もっと進むと港の見える丘公園外国人墓地などの観光地に至る。そこまで来ると観光バスなどで道が混んでくるが、ワシン坂のあたりは歩道こそ狭いが交通量は少ない。走るのが朝だからなのか、車よりもすれ違うランナーの数の方が多いくらいだ。

 坂の名前の由来については諸説ある。日米和親条約の「和親」からとった説。坂下に湧き水が出る場所があり「ワキシミズ坂」と呼ばれて、それが縮まった説。「鷲見坂」が「ワシン」に変化した説。ウシンという外国人が居住していたからという説があるそうだ。坂の電柱のプレートに「鷲見坂」と書かれているのが残っているそうなので、これが一番有力ではと個人的に思ってしまうのだが、短絡すぎるだろうか。

坂下にある湧き水が出るところ。水質が一定しないので飲まないでとのこと

 先に書いたとおり、車が少なくて落ち着いて走れる好きなコースなのだが、このあたりを通るようになったのはランニングを始めてから。40年ほど前に横浜に移り住んだ当時は現在よりもワシン坂に近いところに住んでいながら、利用する駅と逆方面なのでこちらには足が向かなかった。この坂の中腹にワシン坂病院があり、勝手ながら横溝正史作「病院坂の首縊りの家」のイメージがあって(小説では、坂にあるのは家なのだが)、怖いイメージを持っていたのもあった。子どもの頃、横浜の親戚の家に遊びに行くと、ワシン坂方面には行くなとしきりに言われていた。遠くまで行くなって意味だと思うが。

 坂を登り切って観光地に出ていくまでの間が、静かで少し優雅な時間。まだ観光コースに入らずにこの住宅地のコースがもっと続けば良いのにと思ってしまう(意外と短い)。走りながら、足を止めて港やベイブリッジを眺めるのもいい。絶景というほどでもないけど、気持ちのいいコースだ。

丘の上から港を見る