晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「ポー短編集Ⅰ ゴシック編」

 新潮文庫エドガー・アラン・ポーの短編集を読んだ。電子書籍としては文庫全3冊を1冊の合本として売っていて、バラで買うよりは少し安かったので合本で買った。購入したのは実に2年前の8月で、入浴中に少しずつ読み進めていて先日読了した。20近い作品を一度に紹介する気にもならず、文庫にあわせて1冊ずつ紹介する。

 第1巻はゴシック編と銘打ってあって、「黒猫」「赤き死の仮面」「ライジーア」「落とし穴と振り子」「ウィリアム・ウィルソン」「アッシャー家の崩壊」を収録。ゴシックは「怪奇」と理解すればいいだろうか。「黒猫」は、阿部公彦さんの「英文学教授が教えたがる名作の英語」、河島弘美さんの岩波ジュニア新書でも接しているので、話としてはよく知っている。有名なのでネタバレもありかなと思いつつ、恐怖小説なのでやめておいた方がいいだろう。黒猫がらみの話は200年近く経っても、やっぱり怖い。

 もう一つ有名なのは、副題にもなっている「アッシャー家の崩壊」。こちらも名作で、やっぱりおどろおどろしい。友人のロデリック、妹のマデラインが病んでいる状態で、語り手がアッシャー家に呼ばれる。その病気はアッシャー家特有のもので、どうやら特効薬はないらしい。先に亡くなるのは妹のマデライン。最愛の妹の死で兄は一段と衰弱していく――。

 個人的に面白いと思ったのは、「ウィリアム・ウィルソン」。語り手の他に同姓同名の人間がいるという話で、名前も妙にありがちなのがこれまた面白い。結構有名な小説らしいが、「黒猫」「黄金虫」「モルグ街の殺人」くらいしか知らなかったので、新鮮だった。

 エドガー・アラン・ポーの「アラン」は養父の名前だそうで、そりがあわなかったせいか、エドガー・A・ポーと「アラン」の部分をイニシャルにしたりして、「アラン」とは名乗りたがらなかったという話。とことんそうしていたら、江戸川乱歩も違う筆名になっていたかも知れない。