晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心にお出かけもあり。銭湯通いにはまっています

「教養としてのアメリカ短篇小説」

 こういう本を読むと紹介された本もつい読んだ気になってしまうのだが、次(紹介された本を読む)につなげていけないと。著者は、ブコウスキーやジュノ・ディアスなどを翻訳している都甲幸治さん。この本のように作品紹介の本もたくさん書いている。この本はNHK講座をまとめた本だ。

 紹介しているのは、ボー「黒猫」、メルヴィル「書記バートルビー」、トウェイン「失敗に終わった行軍の個人史」、アンダソン「手」、フィッツジェラルド「バビロン再訪」、フォークナー「孫むすめ」、ヘミングウェイ「白い象のような山並み」、サリンジャー「エズメに 愛と悲惨をこめて」、カポーティ「クリスマスの思い出」、オコナー「善人はなかなかいない」、カーヴァー「足もとに流れる深い川」、オブライエン「レイニー河で」、リー「優しさ」。存命なのは、ラストの2人くらいか。現役なのは、イーユン・リーくらいかと思う。ちなみにオコナーは、フラナニーの方。村上春樹さんが受賞したフランク・オコナー賞のオコナーさんはアイルランドの作家。こちらも短篇の評価が高い。若い頃に混同したからあえて書く。

 まず、作品のあらすじを紹介し、そして作家の生い立ちに触れて、再び作品を深掘りというパターン。この中で読んでいるのは、「黒猫」「バビロン再訪」「クリスマスの思い出」あたりか。はっきりと記憶に残っているのは「黒猫」くらいか。よく取り上げられるので大筋は知っている。

 気になった作品をいくつか。メルヴィルは「白鯨」が難解で読みづらいと言われているが、「書記バートルビー」はとっつきやすい気がする。光文社古典新訳文庫のラインナップにも入っているし、やたらと仕事を拒絶する男の話という設定が面白い。Kindle Unlimited でタダで読めるので(会費は払っているけど)、トライしてみたい。

 フォークナーは暗いが、南北戦争あたりの米国事情を理解する上では欠かせない気がする。白人と黒人といった単純な構図だけじゃない。サリンジャーも昔読みにくいと思ったが、ここまで丁寧に説明されるとちょっと捉えやすいように思えてきた。記憶が新しいうちに「ナインストーリーズ」を読んでしまうようなフットワークの軽さがあるといいのだが。オブライエンもそうだが、(当たり前だけど)自身の人生が作品に大きく反映している。作家の生い立ちというのは作品理解に欠かせないと改めて思った。

 最後のイーユン・リーというチョイスが意外。海外にルーツを持ちながら、英語で書く作家は他にもいると思うが。作品世界が独特で書きやすいのだろうか。フラナリー・オコナーも読んでみないとね。