たぶんオンライン書店では出合うことがなかった本だと思う。先日、東京・田原町のReadin' Writin' Bookstore を訪ねた時にエリザベス・ストラウトさんの存在を知った。書店の海外小説のコーナーは割と絞ってあるのに、結構目立つポジションに置かれていたのだ。なのに知らない作家だから当然気になる。迷ったあげく結局別の本を購入したのだが、やはり読みたくなって家の近くの書店で手に入れた。自分のレーダーに引っかからない方面の作家なので、アルゴリズムや検索で知ることはなかったはず。「オリーヴ・キタリッジの生活」でピューリッツァー賞を受賞しているが、この作品を選んだのは、取っつきやすいかなと判断したから。
主人公はむろんルーシー・バートン。象徴的な出来事が話の筋になるというよりも、入院したルーシーを見舞いに来た母親との世間話と断片的な記憶の積み重ねの集合体のような小説だ。エピソードは散っているが話は少しずつまとまりを見せていく。ラストに近づくにつれて話の区切りが徐々に短くなっていくと、どこかリズムが出てきて完結。不思議と読後感がいい。ランニングでピッチをあげたままゴールできたみたい。
ルーシーは盲腸で入院するのだが、食べたものを戻してしまい入院が長引いてしまう。時は1980年代。母親が見舞いにきて5日間泊まっていく。とりとめもない昔話。ルーシーは母親とはそりが合わないのか、単に嫌いなのか。似たくないらしく、整形医に通っている(こういう嫌い方があるのか)。創作教室でのシーンも大事な柱で、ルーシーが小説を書こうとしているのがわかる。そして、この作品自体がルーシー・バートンが書いた小説になっているのだ。
この小説の続編なのか姉妹編なのか、「何があってもおかしくない」「ああ、ウィリアム!」も同じく小川高義さん訳で刊行されている。読んでいないが、前者が連作短編のような形式で、後者が後日談になっているのだろうか。ウィリアムはルーシーの夫で、この「私の名前は」にも登場してくる。これらも気になるところだが、「オリーヴ・キタリッジの生活」を読むのが先になると思う(買ってあるし)。そういえば、この「オリーヴ」の方にも続編と思える作品があるのだった。文庫化を待ちたい。
偶然といえば偶然だが、施設の親へ面会に行く電車内で読み終えた。ルーシーとは逆のシチュエーションだが、残念ながらこちらの会話はかみ合わず。昔話、世間話ばかりとなると嫌だが、場合によっては、それができるのも素晴らしいと思った。。
