晴走雨読 横鎌日記

無理しないランニング(最近ちょっと無理している)と気ままな読書について綴ります。横浜と鎌倉が中心。映画やお出かけもあり

「アラブ飲酒詩選」

 久々に読みたくなった詩集。アブー・ヌワースの名前はなかなか出てこないけれども、アラブの酒の詩集があったなと思い、めくってみた。昔読んだときにつけた付箋が残っていた。いつごろ、読んだのだろうか。

 アブー・ヌワースは8~9世紀にかけてアッバース朝で活躍した詩人。1000余の詩が残されているが、編訳者の塙治夫氏が飲酒詩を中心に編んだ62篇が岩波文庫に収録されている。タイトルの通り飲酒詩が中心だが、恋愛詩、称賛詩、中傷詩、哀悼詩なども数編ずつ含まれている。

アラブ飲酒詩選 (岩波文庫)

アラブ飲酒詩選 (岩波文庫)

 

  過去に付箋をつけた詩をひとつ紹介したい。

 「酒が欲しくなるとき」

 飲酒をとがめる人よ、いつ君は愚かになったのか?

  私に別な忠告をした方が君には似つかわしい。 

 とがめる人に我々が従うくらいなら、アッラーに従っていたことだろう。

  飲み友達よ、朝酒の盃をほし給え。そして、私にも注いでくれ給え。

 私は他人に非難されると、ますます酒が欲しくなる。

 

 付箋は3篇につけてあったが、今でもこの詩を選ぶはず。編訳者の解説には、李白オマル・ハイヤームと比較が載っている。簡単に書くと、アブー・ヌワースは両者に比べると「俗物」だそうである。詩も相当に直球で、酒に関して意地の汚い、ただのオヤジとしか思えない。でも、ここまでズバッと言ってくれるのは気持ちがいい。

 ほかにも、「勤勉に暮らすことはやめて、怠け給え。酒場にさしかかったら立ち寄り給え」と謳った「貴い罪」という詩もある。罪を犯すなら飲酒という高貴な罪を犯せという意味である。

 イスラムでは飲酒が禁止だが、あまり厳格に守られておらず、とくにアッバース朝時代は宰相たちでも飲んでいたそうだ。ぶどうや棗椰子を水につけて発酵させた酒は合法とみなしていた一派もあるそうだ。

 アブー・ヌワースに話を戻すが、ある女性への恋愛も成就せず、男色に走ったこともあるそうである。酒に関しては、ある種の罪深さも感じていたそうで、先に紹介した詩などは逆に開き直りの感すらある。

 この詩集を読んだ後に、野毛に繰り出してみると、何を飲んでも肯定されているようで、おおらかな気持ちで酒を飲めたが、あっという間に懐の方が寂しくなってしまった。ここ数年、低予算で飲むのにも慣れてきたが、ぴおシティの下の立ち飲み屋を、折り畳み式の椅子を持ってハシゴ酒をしている人を見ると、まだまだ修行が足りないと思う(家から携えてきたのだろうか)。立ち飲み屋も簡易椅子をキープさせるなどのサービスを始めたら面白いが。