終活の一環で棚の本を読んで処分するシリーズ(?)。今回は、中島らも「アマニタ・パンセリナ」を読んだ。エンタメノンフといっても十分通用しそうな内容だ。過去に自分がはまったドラッグとの「つきあい」を、ドラッグ別に項目をたてて体験談を語るのだ(一部、見聞したものも含む)。
ガマガエルが分泌する成分をなめるという「がまなめ」。がま毒には二つの成分があり、ブフォテニンという幻覚作用をともなうものと、ブフォタリンというステロイドだそうだ。特に後者は猛毒とのこと。確かに、著者の言うとおり、死ぬならもうちょっと格好のいいもので死にたい。
次からが本人の体験したものが続々出てくる。睡眠薬、シャブ、オピウム(阿片)、幻覚サボテン(ヒクリさま、って呼ばれるらしい)、咳止めシロップ……。長生きした人じゃなかったが、これだけのドラッグを体験して、読んでいても大丈夫かって気になってくる。それも、面白おかしく書いている部分もあって、ある意味、人の不幸とも言える部分なのに、中島らもの自叙伝的記述も少なからずあり、楽しんで、のめり込んで読んでいる自分がいる。
幸いアルコール以外は、この手のものとは縁遠い生活を送っているので、結構他人事なのだが、「素人」にもクスリが恐ろしいと思わせる記述があった。シャブについての部分である(今となっては、苦笑するほかないが、当時大阪府警は、プロ野球選手だった清原を使って、「覚醒剤うたずにホームランうとう」でポスターでPRしていたとのこと)。著者自身も、シャブについては強い憎悪の念を明らかにしている。合法や違法はともかく、何も知らない子どもを狙って、訪問販売のように「拡散」されて、暴力団の資金源になっているためだ。1980年代前半、中学生がシャブ中毒にされたり、小学生がシャブ漬けにされて暴力団員と同棲するはめになった事件があったそうだ。そういえば、少し記憶にあるかもしれない。
で、「ジャンキー内差別」とのちに付け加えながらも、このように綴っている。
シャブは人間をオンとオフのふたつのスイッチしかない状態にしてしまう
アルコールは、オン(酩酊している)とオフ(二日酔い)の間に人間のニュートラルな姿をはさんでいるし、法律で禁止されている大麻もシャブにくらべれば牧歌的だそうである(すごく説得力があるが、やめましょう)。
楽しく読ませるが、きちんとドラッグ類への警告にもなっている。現在、やたらと話題になる危険ドラッグに、中島らも氏が生きていたらどんなアプローチをしただろうか。「今夜、すべてのバーで」「ガダラの豚」同様、この本は処分できない。