晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心にお出かけもあり。銭湯通いにはまっています

「祝婚歌」

 1990年代に出席した結婚式だった。誰の結婚式だったかは忘れてしまったが、同級生と同じテーブルだったので、小中の同級生だったはずである。祝辞も当時の校長だった。夫婦がうまくいくコツとして、「(相手を両目を見開いてしっかり選んで)結婚後は片目を閉じよ」なんて、トーマス・フラーの名言を引き合いに出して、続いて自分のアレンジなのか「とにかく両目をつぶって奥さんに従いなさい。それが家庭円満のコツ!」と締めていた。校長の子どもが同級生で、聞きながら「古くさい」と嫌な顔をしていたのを思い出す。

 さて、「祝婚歌」。有名なのは吉野弘さんの詩だろう。「二人が仲睦まじくいるためには愚かでいるほうがいい(中略)完璧をめざさないほうがいい」と、夫婦関係は力を抜いていけとアドバイスするもの。結婚式で2、3回聞いた記憶がある。「正しいことを言うときは/相手を傷つけやすいもの……」という部分もうなづける。

 田村隆一さんとも川崎洋さんも「祝婚歌」という題の詩を書いている。こちらもなかなか良いが、新夫婦に送る歌なので、どうも説教臭さで出ている。田村さんは「ウイスキー」、川崎さんもどこか生活臭がでているような詩。たぶん、入っているだろうなと思っていたのは、カーリル・ジブランの「ある予言者の言葉」。以前、神谷美恵子訳で読んだが、収録されているのは金関寿夫訳で、「きみたちは共にいなければならない。/だが共にいても、きみたちの間には少し隙間を置くがよい、/空の風が、きみたちの間で舞い踊れるように」。この部分が好きなのだ。

 そのほか、ジョイス、ジャム、ロセッティ、ロレンス、パス、日本勢は、草野心平室生犀星茨木のり子金子光晴など、27編収録。

 しかし、100ページを少し超えたくらいの本が文庫なのに800円近い。紙質はいいが、ちょっと高いかな。でも、読んでいる時間はとてもおめでたい雰囲気だった。