返却する日が迫っていたので追われるように韓国語の本を読んだ。母語じゃないので、日に150ページ以上読むのはしんどかったが、読み終えてみると少しばかり自信になった気もする。実のところ、軽めのエッセイだったから読めたのだが、小説なら読み終えないまま返しにいったと思う。
この本も和訳は出ていないので、一応「小説家のモノ」とつけた。直訳すると「小説家の事物(私物?)」となりそうだが、果物のレモンやリンゴも登場してくるので、カタカナにしておいた。ちなみに、韓国の三大紙の一つ「東亜日報」で連載されたときには、「チョ・ギョンランの物の話」と日本語訳がついているので、そんなに外していないはず。日本では、チョ・ギョナン表記で「風船を買った」が出ている。

このエッセイは、画鋲、鉛筆、洗濯ばさみ、耳かき、缶切りといった日常の「モノ」を取っかかりに思い出や、本や人との出会いなども語っている。驚いたことに、このチョさんはかなり日本の作家の本を読んでいる。弟さんが東京に住んでいて、往来する機会があるので身近に感じる部分があるのだろうか。銀座やお台場といった地名も出てくる。
この本に出てくる日本の作家や作品名をいくつか挙げてみる。レモンの話では当然、梶井基次郎「檸檬」、ハンカチで芥川龍之介「手巾」、津島佑子、角田光代、小川洋子、森見登美彦などの名が出てくる。安倍夜郎「山本耳かき店」(漫画)や、高畑正幸「究極の文房具カタログ」(韓国語題から察するに)はむしろこの作家に教わった形だ。多和田葉子さんに会った話も出てくる。
もちろん、日韓以外の作家も登場してくる。ミランダ・ジュライとかヘミングウェイとかアリス・マンローとか。ジョン・バージャーは、韓国ではジョン・バーガー(ボーゴーに近い)表記であることを発見した。
エッセイだということ、「物」というテーマによるのかもしれないが、何かを社会に問うといった「重さ」は感じなかった。新聞連載のコラムが元だからだろうか。作家はそれぞれ個性があるだろうから、それはそれでいいのだけど。
英語ほどではないが、やはり消耗した。せめて、今日は日本語に浸かろう。