晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「荒野の古本屋」

 帯を見て買ってしまった本。「荒野の古本屋」というタイトルもかなり魅力的だが、著者の森岡督行さんは勝手ながら知らない人。帯を読むと、どうやら銀座で古書店を開くことになった人の話のようだ(と最初は受けとめた)。銀座の古書店?どこだろ? 銀座、新橋、有楽町あたりの書店は、ここ20年くらいでめっきり減ったので、逆にすべて知っているつもりだったのだ。ということで、さっそく読むことにした。

荒野の古本屋 (小学館文庫)

荒野の古本屋 (小学館文庫)

 

  読み始めると、開店した銀座の書店というのは古書店でないことがわかった。これはタイトルに引きずられた。一冊の本をテーマに、そこから派生するものを展示する書店のようだ。そして、単なる成功譚(ある人が銀座に書店をオープンするまでになる)の本ではないのがわかった。ライフスタイルの話でもあるのだ。それもそのはず。この本は晶文社刊行の同名の単行本の文庫化だが、「就職しないで生きるには21」というシリーズの一冊でもある。本と散歩好き青年だった森岡さんが神保町に通い、一誠堂書店で働くことになる。そして、自分の書店を開くなるまでになるという話だ。

 図書館で1941年当時の新聞の縮刷版を見ていた森岡さん。記事もそうだが、広告にも目を止めていた。縮刷版の戦時の朝日新聞で「古本 誠実買入」という一誠堂書店の広告を見た森岡さん、今度は現在(当時1998年)の朝日新聞で、一誠堂書店の求人広告を見ることになる。何かの縁だと思ったに違いない。

 自分は一誠堂書店に入った記憶はないが、入社するとブレザーが支給されるというから、結構年季の入ったしっかりした書店ではないだろうか。お客さんもそれなりで、若い人にはとてもわからないような書籍や文献の問い合わせが多いという。これは鍛えられるなあ。

 森岡さんは、場所というか建築物についても感度が高い人らしい。ここで書店を始めたいと思い込んだら行動に移す人のようで、「独立」を考える。そして、写真集を中心とした茅場町で「森岡書店」を立ち上げ、一冊の本をテーマとした銀座の店を開くことになる。

 新橋寄りにある自分の会社とは真逆ともいえる銀座一丁目にあるそうだが、こんどぜひとものぞいてみたい。ついでに銀座湯も入ってきたい。とりあえずコロナがもうちょっと落ち着かないと、出社の数も増えないし、出歩くのも抵抗がある。