晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「サッカー店長の戦術入門」

 こんな人がいるんだと思った。著者の龍岡歩さんのことである。サッカーのプレー経験はないのに、1993年に幕を開けたJリーグにハマって、テレビ観戦はもちろん、海外の試合まで見に行って、今やJFLを目指すチームの「戦術分析官」。そのチームのおこしやす京都AC天皇杯でJ1広島を5-1で破って話題になる。

 当方、30過ぎまで東京都リーグの底辺でサッカーをやっていて、50歳あたりからランニングが日常化するまでは、たまにボールを蹴っていた程度。昔はサッカー本をよく読み情報も集めていたが、いつしか縁遠くなりこの人の存在はまったく知らなかった。天皇杯でおこしやすが広島に勝ったことは新聞で知っていた。しかし一発勝負の天皇杯では、過去にも高校生がプロを追い詰めたり、大学チームが勝利した例はあった。点差には少しばかり驚かされたものの、あまり気にしていなかった。

 「サッカー店長」とは、著者が、サッカーのオンラインショップに店長として勤めながら書いていた戦術に関するブログのタイトルから来ているようだ。そのブログを読んだ経営者にスカウトされて「趣味」が「仕事」になったそうだ。

 戦術を言語化がするのが上手な人だと思った。サッカー本の読書量で培ったものなのか、その筋のセンスがいいのかはわからないが、ペップ・グァルディオラユルゲン・クロップの戦術や哲学が頭に入ってくる。サッカー経験者なので、自分に受け入れる土壌があるのは認めるが、客観的に見ても取っつきやすいように思えた。

 サッカーは手を使わないスポーツで、何かともどかしい部分がある。監督にとってもいざ始まってしまうと選手交代か、声をかけたり交代選手に伝えたりしてシステムを変更することくらいしかできない。これまたもどかしいだろう。動かせば動かすほどバランスが悪くなるという意味では将棋に例える人もいる。でも、その「駒」だって千差万別。最低限の働きしかしないものもいれば、香車なのに飛車並みに動くものもいる。

 サッカーの監督がかくも面白い職業かと思えてしまうのが、この本の魅力なのだろう。でも、プレーした方が楽しいよ。