晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「本と鍵の季節」

 直木賞受賞作である「黒牢城」に購入すべきだったかもしれないが、ここは文庫化されている「本と鍵の季節」にした。米澤穂信氏の高校生を主人公にした作品を読んでみたかったというのが第一の理由で、同氏には同じく高校を舞台にした「古典部シリーズ」が角川文庫から出ているが、ハマってしまうと面倒なので、こちらを選んでみた。図書委員という設定が第二の理由か。太刀洗万智を主人公にした「さよなら妖精」「王とサーカス」も読んでいて、いつか「制覇」したい作家だ。

 主人公(というか、語り手)は高校2年生の図書委員・堀川次郎。そして、パートナー役が同級生で同じ委員会の松村詩門。作品内では、「ほどよく皮肉屋」と紹介されている。この松村の存在が、この米澤作品の真骨頂と言うべきか。堀川とのやりとりが、ぐっと作品に引き込ませる。セリフ回しがほどよく「ありがち」で、ところどころで「意表を突いてくる」のだ。そして、事件解決の糸口をつかんでいるのは松村である。

 事件とはいえ、「金田一少年の事件簿」のように殺人といった警察沙汰が生じるわけではない。開かずの金庫や割引券を持って訪れた美容室での出来事、テスト問題の盗難のような、フィクションじみてはいるものの、高校や高校生に起こりうる事件がメインだ。もっとも、小学校でも殺傷沙汰があるご時世なので、小説を凌駕するような出来事も時折起こるには起こるが。

 堀川と松村の友情話という一面もあるだろう。集英社「すばる」で連載された小説をまとめたものだが(最終話のみ、書下ろし)、話が進むにつれて、互いへの理解が深くなっているようだ。

 ここらで「小市民」シリーズに手を出すべきか、一度、米澤穂信作品を読みだすとまた読みたくなるから不思議だ。太刀洗万智を主人公にした小説もそうだった。あの時も4冊くらい読んでしまった。