晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ」

 光文社古典新訳文庫で読んだ。自分が kindle unlimited にお金を払っているのは、この光文社古典新訳文庫のいくつかが読めることが多い。とはいえ、なかなか元をとれていない。請求がくると、ついポチッと押して読み始めたりする。この本もそんな形で出会った。

 この2作品は、「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」の後にトルストイが書いた作品で、後期に属する小説らしい。大長編と違って一日で読めるような作品である。

 「イワン・イリイチの死」は、黒澤明監督の映画「生きる」のベースと言われている。黒澤作品で市役所の課長だった主人公は、本作では裁判所の判事となっている。不治の病におかされた後、死に怯えながらも、ある境地に達するまでを描いている。トルストイは実際の人物をモデルにしているらしい。定年近いオヤジが読むには、やや気が重かった。やや捉えどころを間違ったのかもしれない。

 「クロイツェル・ソナタ」はこれが男女の間の話となる。タイトルは、ご存じベートーベンのバイオリンソナタから。当然、作品内にもベートーベンの曲が登場してくる。汽車の中で乗客たちが夫婦関係のあり方を話していた。そこで、ポズドヌイシェフ公爵も自ら起こした事件について語り始める。彼は、友人と不倫関係に陥った妻を刺していまっていたのだ。男女間の禁欲的な愛を説いた作品と言われている。

 若い時に読んでもピンとこなかったかもしれない2作品。このタイミングで読めたのも何かの縁かもしれない。でも、背景がしっかりわかっていないせいなのか、少し積極くさい感じがしている。でも、刊行された19世紀後半には刺激的な作品だったのかもしれない。

 光文社版の翻訳はロシア文学者の望月哲男さん。ドストエフスキーが専門だった(過去形?)ようだが、光文社古典新訳文庫では、他にもトルストイを翻訳している(ドストエフスキーものもある)。こういうのも面白い。光文社古典新訳文庫では訳者にも注目している。