晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「やんごとなき読者」

 村田喜代子さんの本に紹介されていた、アラン・ベネット「やんごとなき読者」を読んだ。簡単にまとめれば、エリザベス女王が読書にはまるという話である。著者は小説も書くのだが、劇作家がメインの仕事のようである。受賞歴は本よりも舞台の方が多いようだ。コメディタッチが得意だという。ちょっと違うが、イメージしたのは井上ひさしさんだ。

 小説は、エリザベス女王が公式晩餐会に招いたフランスの大統領に、作家ジャン・ジュネ(「泥棒日記」が有名)について聞くところから始まるのだが、これは読書にはまった後。その前に、移動図書館でせっかくだからと本を借りたのが始まりだ。

 読書に夢中になる女王。公務がおろそかになり、仕える者にとっては疎ましい。

「陛下にも暇つぶしが必要なのはわかります」

「暇つぶし?」女王は聞き返した。「本は暇つぶしじゃないわ。別の人生、別の世界を知るためのものよ。サー・ケヴィン、暇つぶしがしたいどころか、もっと暇がほしいくらいよ(後略)」

 さまざまな作品や作家の名前が登場してくるのも楽しい。中には知らない作家も出てくるが、それはそれでOK。大いに刺激を受けた。エリザベス女王は映画に出たり、このような小説に登場したりと、愛される存在だったのだなと再認識した。

 ここ数年はそんなことを聞かれた事がないが、昔はよく「何の本を読んだらいい?」と聞かれたものだ。相手の趣味も好みもわからないので困ってしまうのだが、用意していた答の一つが、カレル・チャペック「園芸家12カ月」(「園芸家の一年」という題も)だった。そんなに厚くもないし、軽く読めるエッセー調なので薦めていたのだが、この「やんごとなき読者」もいいなあと思った。読書の喜びがダイレクトにわかる。