晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「村田喜代子の本よみ講座」

 このところ村田喜代子さんが気になる存在である。昔から存在自体は知っていたのだが、文庫化される本が増えてきたせいなのか、ちょっと身近になった気がしている。こちらが歳をとることによって、接近してきたような感覚かもしれない。九州を拠点とする作家。1987年に芥川賞を取っている。ウィキペディアを見ると、思っていたよりも多作だ。読んでいない本が多いのは楽しみでもある。

 タイトルから想像できるとおり、こちらは小説ではない。村田喜代子さんの講座がベースで、それが平凡社の文芸誌に掲載され、中央公論に載ったコラムと一緒に本にしたもの。この講座は最初、50人ほどでスタートしたという。読んでしまった後だが、結構贅沢だなと思う。本を読む力を育もうという趣旨だったらしい。

 紹介されている本は、ひとくせあるとも言えるが、そこまでひねくれているとも言えない。土地柄、九州ものがあるが、どちらかというとややファンタジーという感じじゃないだろうか。稲垣足穂、内田百閒と自分が20代の頃にはまった作家が紹介されている。本から本へと話は進むのだが、すべては書けないので、章立てになった本だけ書き記しておく。

 レアード・ハント「ネバーホーム」、アラン・ベネット「やんごとなき読者」、クリスタ・ヴォルフ「チェルノブイリ原発事故」、星新一「おーい でてこーい」、山野辺太郎「いつか深い穴に落ちるまで」、伊達公雄他「唱歌の社会史」、村田喜代子「エリザベスの友達」、永井隆長崎の鐘」、吉田満「初稿版『戦艦大和ノ最期』」、村田喜代子「手なし娘協会」、内田百閒「坂の夢」、稲垣足穂「ファルマン」、ガルシア=マルケス大きな翼を持った老人

 本にする状態で手を入れているとは思うが、非常にユーモラスな雰囲気の講座のように思えた。普段書いているテーマから、やや堅物ではと思っていたが、もうちょっと柔らかい人のようである。大学で教えているので、講義慣れしているのかもしれないが、こんな講座なら是非参加したい。オンライン講座でないだろうか。せめて、講座が続いているのなら続編を出して欲しいと思っている。