晴走雨読 横鎌日記

無理しないランニングと気ままな読書について綴ります。横浜と鎌倉が中心。映画やお出かけもあり

「あなた、その川を渡らないで」

 日曜日に黄金町のシネマ・ジャック&ベティで韓国映画「あなた、その川を渡らないで」を観た。珍しい(?)東京の映画館の封切りと同時の公開。そのせいか、もしくは土曜夕刊の新聞広告が効いたのか、「ベティ」側の館内はほぼ満員のようだった。上映開始30分ほど前に着いてゆっくり本でも読ませてもらおうかと思っていたが、入場券を兼ねた整理券の番号は66。椅子の空きはないし、入り口に客が押し寄せ、「ジャック」側に並ばせるほど。こんな混みようは実際目にした光景としては「おみおくりの作法」以来か。雨で外に整列させられることができなかったという事情もあるだろうけど。

 さて、この映画は98歳の夫と89歳の妻をえがいたドキュメンタリー。韓国なのでおそらくは数え年で、満でいうと幾分若いと思われるが、それは些末な事。76年間の夫婦生活というのは想像しがたいが、冒頭の数シーンだけでもその仲の良さが伝わってくる。四季などの環境の変化をその都度二人で楽しめることが「長持ち」の秘訣だろうか。

 美しい風景から判断すると、この老夫婦が住むのは、たぶん韓国の日本海側の江原道(カンウォンド)だろうと思う。そもそも長寿カップルとしてTVで有名だった二人をテーマに映画制作を思いついたのがはじまりだとのこと。当初、監督や制作側には夫の死を想定していなかったと思うが、こんな事情の変化にも、カメラは静かに回り続ける。撮影期間は1年3カ月。

 間違いなく純愛物語。しかし、受け止める自分が勝手に「死」の比重を高めてしまう。このように死を受け止められるか。このように生きられるか。もちろん、年齢的に天寿をまっとうしたという受け止めもあろうかと思う。宗教観もあるだろう。人生を四季にたとえて、「流れ」として受け止めている様子が印象的だった。

 韓国ではドキュメンタリー映画としては異例の480万人の動員。国民の10分の1が見た計算になるという。ちなみに大ヒット映画は1000万人超の観客動員となる。たぶん二度三度と劇場に足を運ぶ人がいるのだろう。日米の興行成績は金額だが、韓国はなぜか人数で表わされる。昔、韓国映画事情に詳しい人にその違いを聞いたが、わからないといわれてしまった。