晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「ケーキの切れない非行少年たち」

 ベストセラーと呼ばれる本に食指が動くことはあまりないのだが、「ブックオフ」でもう一冊くらいは(予算的に)買えるかな、と思っていた時に目についた。タイトルで釣っている気がして何となく避けていたが、読んでみると売れた理由がわかった気がした。漫画化もされている。

 著者の宮口幸治さんは現在大学教授で、児童精神科医として医療少年院で勤務した経験があり、臨床心理士でもある。本書は医療少年院や女子少年院で出会った発達障害、知的障害を持った非行少年たちの話である。その中にケーキを等分に切れない少年がいたとことから、このタイトルが生まれた。障害を持ちながら表に出にくい少年たちが然るべきケアを受けないまま成長して非行に走ってしまう。これは非行少年に限ったことではなく、比較的症状が軽い子どもが軽視されがちなのは、学校でもありうることである。「障害がある」と見られるのが嫌な場合だってあるだろう。 

ケーキの切れない非行少年たち(新潮新書)
 

  非行少年には共通項があるという。認知機能が弱い。感情統制があまりできない。融通が利かない。自己評価ができない(高すぎる、低すぎる)。対人スキルが乏しい。身体的に不器用(力加減が下手)。これは思いつくところがある。周りには警察のお世話になるような人間もいたが、すべてじゃなくてもかなり当てはまる。ここらと発達障害などが結びついているケースもあるし、そのようなサインが出ているのに周囲が見逃しているケースもあるようだ。少年院を出た後を支援する人たちも非行に理解があっても、このような障害までは気づかないことが多い。

 そもそもの障害を1次障害とすると、学校などで適切な支援を受けられないのが2次障害、矯正施設で厳しい指導を受けて悪化するのが3次障害、社会に出ても理解されずに非行を繰り返すのが4次障害と、著者は見ている。

 まとめてしまうと、そのような存在や兆候に気づき、相応のケアをすれば、犯罪は減っていくのでは、という話なのだが、これこそ加減の難しさもあれば、態勢が整っていない部分もあるだろう。事は簡単じゃない。

 この本を読んだタイミングで続編の「どうしても頑張れない人たち」が刊行された。これは新刊で読んでみようという気になっている。