晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「橙書店にて」

 週末には長い距離を走るぞと意気込みながら、当の週末にそんな気持ちが萎えている。いつものように早起きはしているのだが、WOWOWで映画を見てしまってもういい時間だ。ちょっと前に買った本でも読もうかと、読み出したら面白かった。

 熊本の喫茶兼雑貨店と小さな書店を営む女性のエッセイ。近頃、本がらみや書店ネタの本がやたら出ているような気がして、出版する側も、本好きが買ってくれる本を確実に売ろうとしているのではと勘ぐってしまう。筆者も知らないし、書店も知らないけど、「橙書店」という店名が気になって買っていたのだ。なぜか知らないがオレンジ色が好きなのである。決して、読売ジャイアンツのファンではないのだが。

 店に訪ねてくる人(動物も含む)を書いたエッセイなのだが、石牟礼道子さん、伊藤比呂美さん、渡部京二さん、黒田征太郎さんなどが話に登場してくるし、村上春樹さんが店で朗読会に開いたりする。映画監督やら編集者やらも訪ねてくるし、著者の前歴を知りたい気持ちになるが、「会社勤めを経て」と略歴に書いているだけで、詳しいことは知らない。「取材で会った」と書いているので新聞か出版社か、そのような系統の仕事をしてきたみたいだ。かしこまらない文章がすっと頭に入ってきて、いつの間にやら読了してしまった。一話の長さもちょうどいい。

 こんな本を読んでしまうと、いろいろな人と出会える「書店主っていいな」とついつい思ってしまうのだが、そんな甘いものではないはず。このご時世、書店一本で食べていけるとはとても思えないし、家族曰く、自分は商売ができないタイプだそうである(自分としては家族が思っているほどではないのだが)。

 田尻さんの店は文芸誌の編集室も兼ねているらしく、「アルテリ」という文芸誌を年二回発行しているとのことだ。一度読んでみたいと思っていたら、鎌倉のたらば書房と妙蓮寺の本屋・生活綴方に置いていると書いてある。なんとか手に入れることができそうだ。