晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「かぼちゃを塩で煮る」

 いままで表紙買いはあったが(特に単行本で)、タイトル買いは初めてかもしれない。本のタイトルだって表紙に書かれているのだから、これも表紙買いの一種ととれるか。ふと寄った書店で、予定になかった本を購入してしまうことはそれなりにあることなのだが、知っている作家だったり、どこかで評を読んでいたりとどこか「取っ掛かり」のようなものが多かれ少なかれあった。しかしこの本に関しては、まぎれもなくタイトルのみに惹かれた。幻冬舎文庫の棚でこのタイトルだけが目に入ってきたのだ。牧野伊三夫(「いさお」と読む)さんという存在すら知らなかった(ごめんなさい)。画家というくくりでいいのだと思う。

 簡単にまとめると、食に関するエッセイである。好きな料理、好きな飲み方、好きな酒のアテというのが書かれている。購入前にチラッと読んだが、「砂糖醤油で甘からく煮たかぼちゃが苦手で……」と書いてあり、僕と一緒じゃんと、まるで飲み屋で気が合う人に出会ったような気持ちになり、一緒に店を出てしまったのだ(購入してしまったのだ)。ちなみにかぼちゃを塩で煮たものにお目にかかったことはない。でも、この本によると美味しいとのことだ。

 「ハイボールのおいしい作り方」もいい。確かに家で作る氷は溶けやすいので。グラスの大きさは大事である。大きすぎると確かに水っぽくなる。小さすぎると、こまめに作らなければいけなくなる。そうか、ウイスキー→氷→炭酸なのか。グラスの棚と冷蔵庫の距離から、グラスにすぐ氷を入れてしまう。今度試してみよう。あまり、変わらないかもしれないが、ひと手間かけた気持ちになっておいしく感じるかもしれない。

 気取らない文章に好感が持てる。著者ほど厨房に立つことはないが、シンプルに家でも出来そうな料理を紹介しているので、いつか試してみようという気持ちになる。歳が近いせいか、どこか価値観も似通っているようで、いちいちうなずきながら読んでしまった。絶対やるもんかと思っていた断食も、いつかやってみようかという気持ちにさせられるから不思議だ。