晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「十二人の手紙」

 駅構内の書店で、井上ひさし「四十一番の少年」を買った。新潮、文春、講談社、角川あたりの文庫は、中公やちくまあたりと比べると割と安価で買えるので、手が伸びることが多い。その本の帯に「『十二人の手紙』の次に読みたい衝撃作」とあった。そういえば家にあったじゃない、その本が。というわけで、こちらを先に読むことにした。

十二人の手紙 (中公文庫)

十二人の手紙 (中公文庫)

 

  手紙のスタイルを取った短篇が十三篇。ひとつ多いのは、後で説明させてもらう。上京した女性が家族や恩師に向けた手紙やその返信、ある作家へ自作の批評をしてもらうために送った手紙。出生届や転籍届を並べて、ある人物の一生を綴った作品などとなかなかバラエティーに富んでいる。いずれも、ラストに一ひねりを加えた読み手を楽しませる仕掛けが待っている。手紙って必ずしも本音じゃないのが面白い。

 「悪魔」「葬送歌」「赤い手」「ペンフレンド」「第三十番善楽寺」「隣からの声」「鍵」「桃」「シンデレラの死」「玉の輿」「里親」「泥と雪」「人質」の順。最初の「悪魔」は、なるほどそのような形の話が続くのかというイントロ。「ペンフレンド」は途中でオチが分かったが、ほほえましいから良しとしよう。最後の「人質」はこれまでの登場人物が再登場。少々強引かなと思ったが、これはこれで面白い。