あまり勉強勉強しているのはかなわないが、これならアリと読んでみた。阿部公彦さんが、6作の古典プラス村上春樹さんの短篇をもとに、作品鑑賞から英文の読解まで楽しませてくれる。いずれも抜粋だが、これ以上あると疲れるのでちょうどいい。「ロビンソン・クルーソー」「ガリヴァー旅行記」「高慢と偏見」「黒猫」「リッチ・ボーイ」「老人と海」、そして、村上春樹「シェエラザード」。たぶん「リッチ・ボーイ」のフィッツジェラルド以外の説明は不要だろう。あえて書けば、デフォー、スウィフト、オースティン、ポオ、「リッチ・ボーイ」を飛ばして、ヘミングウェイ。
2年ほど前だろうか、アスク出版から「ヘミングウェイで学ぶ英文法」という本が出て、これが好評で、同社はその続編や、オスカー・ワイルド、オー・ヘンリーでほぼシリーズ化している感じ。学習書なので知れてはいるが、売れ行きは好調と聞く。英語学習書はいろんな出版社が出していて、書店に置いてもらうのが大変らしい。スペースは限られているし、いろんな出版社が文法や作文の本を出せば、どうしたって内容は似通ってくる。
この本は、著者が阿部さんだというのが一番の買った理由だが、出版社が文藝春秋だというのももう一つの理由。新書で英語の学習書や啓蒙書らしきものを出すと、ほぼ売れるとのこと。これは新書ではないが、たぶんよその出版社なら、この値段(1750円+税)では出せないだろう。英文の字が小さいところが、つらいと言えばつらいが、200ページくらいでおさめて、この値段でこの内容なら、文句はない。文春も英語書籍に参入か。
日本語で作品を把握させて、原文を読み、丁寧な解説。。阿部さんだけあって、作品鑑賞の点では「ヘミングウェイ」を上回っている。日本語と英語の差はあるが、倒置や反復などと書き手が狙う効果というのは、言語の差ほどの違いはない。このように足を止めて丁寧に読んでいくと、日々読んでいる日本語の文章に申し訳ない気持ちになってくる。とはいえ、いつもいつもそこまでは読めない。小説と詩くらいはじっくり読んでみようかという気持ちになった。もちろん、英語ももうちょっと読んでみようかという気になり、「高慢と偏見」を原書で買ってしまった。