晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「定本 蛙」

 自分の中で、詩人・草野心平の存在が大きくなってきた。とっかかりは、やはり東日本大震災原発事故なのだが、郷里の近くにもこんな人がいたんだというところから読み始めた。先月帰省した際に、草野心平生家といわき市草野心平記念文学館に寄りたいと思い、いわきからほぼ半日かけて行ってきた。こちらについてはいずれ書かせていただく。

 記念文学館に行った際、訪れた思い出に「定本 蛙」を買おうと思ったのだが、カードが使えず現金もさほどなかったので、そこでは断念。結局アマゾンで購入した。日本図書センターが、当時の本の近い形で復刻してくれていて、入手困難というレベルの本ではなかったようだ。草野さんが書いた蛙に関する詩の4分の3が収録されているとの事だ。

 カエルというと、鳴き声は「ケロケロ」「ゲロゲロ」とカ行(ガ行)とラ行で表現される事が多いと思う。草野さんの詩を読むと、カ行とラ行も多いのはもちろん、ハ行(バ行)やマ行、ワ行、ア行などが加わり、カエルの鳴き声が多様である。いや、蛍やドジョウが加わっているのかもしれないし、鳴き声だけじゃなくて動作も表現している可能性もある。

 存在くらいは知っていたが、初めて読んだのは「草野心平詩集」(ハルキ文庫)で、ほんのちょっと前。草野さんが「天才」と信じる宮澤賢治を世に出そうとした一人だと知ったことから関心を持った。生前にあまり注目されなかった宮澤作品を家族に保管するように助言したという。これには高村光太郎も絡んでいる。

 話はそれてしまったが、カエルがすごく自由な存在のように感じさせる詩集なのだ。

ぎやわろっぎやわろっぎやわろろろろりっ

ぎやわろっぎやわろっぎやわろろろろりっ

(繰り返し)

 カエル語の詩があり(日本語訳あり)、カエルの独白調の詩があり、自然を謳っているようで、人間社会をじっと見つめているような。小川郷を歩いていると、カエルの声がそのように聞こえてくるような気がしてきた。でも、昔はもっと大きな鳴き声だったのだろうな。