晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「幻のユキヒョウ」

 去る10月23日は「世界ユキヒョウの日」だったそうな。ユキヒョウは世界に3千頭とか8千頭とか、ロシア発の記事だと1万頭とかと言われ、正確な数字がわからない。逆に言うと、それだけ調査が進んでいないとも言える。なんてたって中央ユーラシアの高地に住む動物なので、生息地に行くだけで大変だ。

 そんなところで気になったのが、この「幻のユキヒョウ」という本。それ以上に気になったのが、著者の「ユキヒョウ姉妹」。こまどり姉妹、阿佐ケ谷姉妹、叶姉妹と時代をともにしてきたが、ユキヒョウ姉妹は初めてだ。副題の「双子姉妹の標高4000m冒険記」にあるとおり、この姉妹は双子。姉は木下こづえさんで、動物の保全・繁殖生理学の研究者。妹は木下さとみさんで、電通に入って商品のブランディングなどを担当しているらしい。今年出た本だから、まだ同じ仕事をしていると思って良いのかな。研究者と売り手のタッグチームである。姉が生態を調査し、妹が保全や保護活動のためのプロモーションをするといった感じか。

 この双子は趣味などは似通っているらしく、ユキヒョウユーミン松任谷由実)にはまっている。本のところどころで、節目の局面でユーミンの歌が登場してくる。表紙が絵本チックな部分もあるし、あまりアカデミックになりすぎないように書かれている。その中で登場してくるユーミンの歌も硬さをほぐす役割がある。

 モンゴル、ラダック(インド北部)、キルギスと調査は進む。ちょっとした冒険譚になっていて、出来事などはそれなりに面白い。環境問題でユキヒョウの生息地は減少し、密猟などで狙われることもあり、かつ家畜を襲った際に報復で殺されることもあるらしい。日本でもクマが話題になっているが、生態系や環境のバランスがおかしくなると、このような「摩擦」が起きる。

 日本の動物園にもユキヒョウは何頭かいるが、この夏にも(知っている限りでは)2頭死んでいるらしい。こんなにも深いユキヒョウ愛を持っている人がいるとは驚いたが、調べれば調べるほど結構愛されている動物なのだなあと思えてきた。